5月4日から天気が崩れる予報だったので出発を予定より1日早くして、4月30日(木)の夜 守谷さんの車で出発。黒部立山アルペンルートの扇沢ステーションに到着して有料の駐車場テントを張ろうとした時に1つ目のアクシデント。なんと上林がテントのポールを忘れてきてしまった事が発覚したが、全く同じタイプ(エスパース 4-5人用)の古いテントを守谷さんが持ってきてくれていたため、このテントのポールを使用する事ができた。軽く飲んで就寝(ワイン1本空けた)。アルペンルートの有料駐車場は12時間1000円のぼったくり。立山で3泊して戻ってきたらいくらになるのか。。
朝食を取り、荷物を扇沢駅に置いて車を無料駐車場に移動してもらい、7時30分発の始発のトロリーバスに乗る。順調に乗り継いで 室堂に9時前に到着した。
室堂から見る立山連峰の稜線は全く雪が無く黒々としている。この時期にしては極端に雪が少ないだろう。
ここで2つ目のアクシデント。室堂で荷物を背負って前かがみした時に腰全体に痛みが走った。いつものぎっくり腰なら ここで山行が終わる所だがコルセットを巻いて何とか動ける痛みだったので、とりあえず雷鳥沢キャンプ場に移動。途中 室堂山荘からショートカットして滑ったが、雪面はこの春どの山でも特出して多い縦溝だらけで苦労した。
まだ一面雪に覆われた雷鳥沢キャンプ場に到着し、ちょうど良い大きさに整地された 使用済みの場所を見つけてテントを張った。水とトイレのある管理棟がすぐ近くにありAUの携帯電話も通じるとても便利な場所である。腰の痛みのためテントの中でしばらくごろごろする。何とか動けそうではあるが中々出かける決心がつかない。意を決して自分の体の様子見も兼ねて、一ノ越あたりまで行くことにする。雷鳥沢キャンプ場と室堂を結ぶ 雪上車で圧雪された道の途中でシールと付けて一ノ越に向かって登りだす。一ノ越から雄山への稜線は全く雪が無い。腰はピリピリするものの あまり支障なく動ける事が判り、一ノ越までだと短いので浄土山を目指す事にする。少し急な斜面を登り浄土山のピークだと思われた所で少しのんびりした。(後でこのピークは浄土山の手前の小ピークだった事が判った)
浄土平手前のピークにて
展望は抜群で遠く槍ヶ岳や、薬師、黒部五郎なども見えるが ともかく雪が少ない。しばらく休憩した後 室堂方面に滑走開始。
まっすぐキャンプ場に戻らず室堂経由にした理由はただ一つ。3日分のビールの買出しである。テントに戻ってもまだ15時前で 景色を見ながらテントでごろごろして夕食。日中は暖かかったが17時過ぎから急に冷え込んだ。この日は 行動が軽いので アマノフーズのグリーンカレーと白米のみ。翌日以降の酒が無くならない様にセーブして飲んで就寝。
1日目 GPSトラック図 (登り;赤色、下り;青色)
5時過ぎに起床し、アルファ米の朝食を取って7時出発。まだ硬い雪面を沢沿いに少し下って 稜線に向かって登り始める。登り始めは雪面が硬かったが7時半頃から少し雪面が緩み始めて稜線に出てからは快適なシール歩き。剣岳を北東側にずっと眺めながら歩く絶景コースだ。奥大日岳までの標高差は少ないが、アップダウンや、少し硬い斜面の長いトラバース などがあり結構疲れた。ほどなく奥大日岳に到着。ここまで人も少なく静かな山歩きが楽しめた。頂上直下でドロップポイントを確認するが、北側に張り出した雪庇が2mほど切れた所があり、ここからなら滑り込めそうだ。
剣岳をバックに
ゆっくり休んだ後カスミ沢に滑り込む。しばらくかなりの急斜面だが表面の雪は柔らかく また縦溝の無い奇跡の斜面で滑りやすい。カスミ沢をずっと滑る予定だったがデブリが酷いので途中から東側の尾根に入り、標高差で320mほど滑ったところで登り返す事にする。予定ではさらに150mほど滑って「天狗の踊り場」と呼ばれる台地まで行く予定だったが、縦溝が出始めたのとキツイ登り返しを考えて ここまでとした。シールを貼って登り返すが急な所は雪面が崩れて体力を消耗する。最後の急斜面は歩行アイゼンに履き替えて板を背負って登った。雪が柔らかすぎてピッケルは役に立たず。ぜいぜい言いながら奥大日岳頂上直下に戻り、大休止して元来た道を戻る。稜線から北側の斜面はいくつか滑れる所が有り、シュプールもある。
帰りは基本的に下りだが、微妙なアップダウンが多く シールを付けていないため何度か板を外して担いで登って結構疲れた。
15時前にテント場に戻り、まだ時間がたっぷりあるので 歩いて10分の雷鳥沢ヒュッテに温泉に入りに行き、入浴後 生ビールを飲む。温泉も生ビールも600円で良心的な値段だ。
テントに戻り、しばらくごろころして17時半頃から夕食。メニューはパスタ。ソースはレトルトを使ったので美味しかったが、サラダ用の早ゆでパスタを使ったら麺にこしがなくて あまり美味しくなかった。雷鳥沢のキャンプ場も 昨日よりずいぶん人が増えた。いろいろなタイプの人がおり、国際色も豊かで賑やかになった。
夕食後だらたら飲んで22時頃就寝。夜になっても気温が下がらず、テントシューズでトイレに行ったらテントシューズの底がかなり濡れてしまたので、ガスコンロで乾かしてから寝た。
(上林 記)
2日目 GPSトラック図 (登り;赤色、下り;青色)
前日の雪面状況から考えて雷鳥沢の登りがアイスバーンであることは予想できたが、平蔵谷か長次郎谷を行けるところまで行くロングルートなので7時に出発。案の定、多くの山スキーヤーはザックに板をくくりつけて出発している。我々は登り出し点からクトーで対応することにした。雷鳥沢も縦溝の形成が非常に進んでおり、クトーが溝ではなく山にかかるように歩幅を調整しながら登るのは疲れる作業だが、スリップすると下まで滑落しそうなので慎重に登って行く。途中からは下から見て左側が比較的斜度が緩く、縦縞も酷くないことがわかり、こちらを使うことで少し楽に登れるようになった。最後は数十メートル程夏道を歩いて剣御前に出る。この雷鳥沢の登りは一つの要注意点と予想していたが、剣御前まで所用時間1時間40分は順調である。剣御前で少しゆっくりした後、本日最も長い滑降となる剣沢へ。ここからの剣岳は本当に素晴らしく斜面は広大なのだが、見事なほど縦縞模様に覆われており、少し残念。
剣沢と剣岳
本来なら雄大な大斜面に心地よく弧を描きたいところだが、溝に引っかからないよう注意しながら滑る。途中、剣沢キャンプ場を通過したが、10張ほどテントが設営されていた。キャンプ場までで標高差250m程度。まだまだこの倍程度滑降は続く。滑るにつれ剣沢東面の源次郎尾根や八ツ峰との岩峰群が近付いてきて大迫力。平蔵谷出合で年配のクライマーの方が休憩されていたのでされていたので少し立ち話をすると朝の散歩がてらに平蔵谷を詰めて降りてきたとのこと。本チャンとは一体どこを攀じるのだろうかと驚く。平蔵谷は真っ直ぐ続いておりコルまで見渡せたので、登り切ることも出来そうに思えたが、地図から読み取れる斜度感を警戒して今回は長次郎を詰めることに決心した。
100m程度の高度差を滑って長次郎谷出合まで出るとテントが一張り。また、二人ほど山スキーヤーが登り始めていた。地図でも明らかなように長次郎谷の方が出合の傾斜は緩いが、先が見えない。果たしてどこまで登れるかはわからないが、12時になったら必ず引き返す覚悟で登り始める。何しろ帰り道には長大な剣沢の登りが待っている。
平蔵谷もそうだったが、長次郎谷も縦溝が無い。この違いは一体何なのだろう。所々小さなデブリがあったが、順調に高度を稼いで行くことができた。二股まで行き、左俣・右俣のどちらにしようかと考える。左俣を登って剣岳頂上を往復する「点の記ルート」を辿る記録が多いが、見上げたゴルジュが狭く、通過するのが良い気持ちがしなかったので右俣を進むことにした。右俣も上部はきれいな1枚バーンになっており、充分滑りがいがありそうだった。
長次郎谷(上;二股から見た左俣、下;最高到達点から見た右俣)
順調に高度を上げて行ったが、11時過ぎから上空に雲が広がり始めてきた。また源次郎尾根から剣北壁の急斜面から融雪雪崩も発生していたので11時半、高度2570m付近で登行を終えることにした。頑張れば稜線まで行けたかも知れないが、長い剣沢の登りが控えているので無理は禁物と判断した。八ツ峰X・Yコルとほぼ同じくらいの高度ではなかったかと思う。Y峰フェースや源次郎尾根、剣山頂にはアンザイレンしたクライマーの姿も見えた。シールを外して大休止後、滑降にとりかかる。ここは少しデブリが出ている箇所があるが、それをうまく避けながら滑ると本当に快適。雪も重くなく適度なザラメである。1時間44分かけた登りをわずか12分で滑ってしまった。
3日目GPSトラックデータ(登り;赤色、下り;青色)
さてここからが試練の剣沢の登り。この日、雷鳥沢+長次郎谷で既に標高差1050m登っているが、あとさらに750m登らなければならない。斜度は緩いが、その分距離がある。最初はかなりいいペースで登れたが、次第に足が疲れてきた。剣沢は大きなS字状にカーブしているので、登行終了点の剣御前が見えず、精神的にきつくなり、剣沢キャンプ場付近で上林さんに先に行って頂く。一度これまでの半分くらいのペースまで落として耐えていると徐々に脚力を取り戻すことができた。剣御前小屋直前のトラバースではしっかりしたトレースにも助けられて無事本日の登行を終了することができた。後は雷鳥沢まで縦縞に注意しながら滑り、16時前にテン場に辿り着いた。夕食はマーボー春雨。
(守谷 記)
この日は天気が下り坂の予報だったので、5時に起床して朝食後直ぐに撤収して室堂に向かう事にする。
室堂に到着するまで雨は降らないだろうと思っていたが、テントを撤収して歩き出す頃には雨が降り始めてしまった。暑いので着たくないヤッケを着て室道方面に登り返す。行きと同じショートカットルートを行こうと思ったが、ホワイトアウトで、除雪した道沿いに歩いたらミクリガ池経由になり遠回りになってしまった。おまけに登山道は何箇所も雪が切れて板をかついで歩かされた。
なんとか7時40分の始発の室堂発のトロリーバスに滑り込んで一息。その後も順調に乗り継いで9時前には扇沢駅に到着した。
大町温泉郷の薬師の湯に入り、道の駅で昼食を取って帰宅の途についた。混雑のピークより1日早い帰宅のため、大渋滞には巻き込まれずに帰る事ができた。
天候に恵まれ、ほぼ予定通りの行動ができて満足のいく山行であったが、縦溝だらけの雪の斜面と1ヶ月早い雪解けで、今シーズンの山スキーはもう終わりかなと思った。
(上林 記)