パウダーねらいの山行であるが、前日は低気圧が通過し暖かい南風が吹き込む天気となる。標高の高い平湯は雪であろうとの期待も空しく、前日の夕方に現地に到着すると土砂降りの雨でテンションは一気に下がる。石黒車は松本(塩尻北IC付近)の健康ランドで仮眠、小久保車と佐藤車は現地で合流した。
平湯キャンプ場に駐車し、出発の準備をしていると時折風が強くなり前途多難な感じがする。とりあえず1841m地点までを目標として、来シーズン以降の下見も兼ねて出発する。夜半から降り出した雪がうっすらと積もっている。まもなく、最初の尾根に取り付くため狭い沢へと入る。前夜の雨で雪面が凍りカリカリになっている。途中からクトーを着装し苦戦しながら尾根へと登る。1504mを過ぎ1580m付近で細いスノーブリッジが架かる沢を渡る。対岸の急斜面を登ると雰囲気の良いなだらかな尾根となり、風も予想外に穏やかである。出発時に目標としていた1841mを過ぎ更に登り続けると、しだいにカリカリ音が消え新雪状態となり滑降に期待感がでてくる。予報より状況は良いとはいえ、休憩で冷えた指先は痛いほどで、歩き始めてもなかなか元にもどらない。標高2000m〜2100mの急登をこなし、地形図の2289mを本日の折り返し地点とする。出発からここまで4時間半。山頂までは標高差でまだ480mあり、四ッ岳登頂はかなり大変だと感じた。
降雪で視界は良くないが滑るには支障がない程度。適度なオープンスペースもあり、思いのほか快適なパウダーランとなる。快適な斜面を求めて左右に移動しながら高度を下げるとしだいに悪雪となっていきカリカリ音がでてくる。渡渉点まで降りてシールを付け、登りと同じスノーブリッジを渡り尾根に上がる。朝方苦戦したアイスバーン+急斜面+木密度の濃い嫌な斜面を、横滑りを多用し安全第一で滑り降りキャンプ場に到着した。GPS計測では登り標高差1300mほどで、出発前の悪条件から考えると充実したツアーとなった。
日本秘湯を守る宿「中の湯」は穂高連峰を正面に眺める高級感のある一軒宿だが、我々は別館で部屋が狭い9000円のエコプランで山の湯を堪能した。食事後、購入したばかりのプロジェクターで勉強会となった。
(佐藤 記)
【備忘録】
・ 前泊した「信州健康ランド」は宴会利用が主であまり落ち着けませんでした。料金は約3,000円。あまりに混んでいて仮眠場所が満員だったので石黒は車で寝ました。
http://www.kur-hotel.co.jp/shinsyu/index.html
・ 平湯キャンプ場の駐車場はスキー場関係者の駐車スペースになっているので、この時期でも除雪されていました。
・ テントを張るなら平湯トンネル料金所の先の屋根のある駐車場(トイレ有り)か、平湯キャンプ場駐車場の一段上(本来の駐車場、トイレはなし)。
・ 本文中にありますが、山頂を目指すなら天候を見極めて早立ちが必要です。
(石黒記)
今日も初めてのコースなので楽しみだ。昨日と異なり晴天で風も弱い。旅館の裏側を回り込むようにして安房峠旧道まで登る。雪面はガリガリに凍結しており先が思いやられる。旧道をしばらく水平移動して1629m地点から尾根に取り付く。ここから1900m付近まで等高線が詰まっており登りの核心部だ。登り始めは大きくジグを切りながら標高を稼ぐ。風が弱いので暑さを感じるほど。
1800mを過ぎると尾根が狭まり細かいキックターンを繰り返す。雪面が固くクトーを付けてもずり落ちそうで時間がかかる。苦労して1900m地点まで登り小休止。焼岳が間近に見える。稜線に出ると風が強くなり一気に冷える。
この先は傾斜が緩くなり尾根も広くなるので楽になる。途中から霧が出て視界が悪化してきた。2000m付近で近くのアカンダナ山に登っている藤澤さんから無線連絡が入る。2100mを過ぎた頃から稜線東側に雪庇が大きく発達している。先頭の中川さんが雪庇の下が歩き易そうだと言うが当然却下。雪庇に乗らないように林間側に寄ると狭く段差があって登りにくい。最後はほとんど平坦になった尾根を進むと山頂の目印の人工物が見えてきた。多少苦労したが安房山に到着。準備をしているうちに視界が良くなってきた。
雪質が期待できないので登ったルートを引き返そうとの意見もあったが、予定通り小船に降りることにする。登ったコースをしばらく戻り、ピットを掘って積雪状態を確認してから滑り始める。谷に入るとコースの全貌が見渡せる。適度な傾斜のオープンバーンが下まで広がっている。滑り始めはくるぶし程度のプチパウダーでなかなか快適だ。その先には雪の固まりが凍結した粒が一面に広がっていて滑りにくくなる。比較的きれいな斜面を求めて左右に移動しながら高度を下げる。小船手前で1日(金)の高温・降雨により発生したと思われる流程150m、幅20mほどのデブリ跡があった。安房山北面はかなり上質な斜面で雪質の良いときに再訪したいと思った。
小船は周囲を山に囲まれた大きな窪地でちょっと変わった風景だ。ここから200mほど登り返す。コルに突き上げる谷を登るのが一般的らしいが、周辺にデブリ跡があるので念の為に南側の尾根を登る。ここも急傾斜で表面がクラストしているので苦労して登る。今日はこんな斜面ばかりだ。少し時間がかかったが滑落することなく全員コルに到着。焼岳が更に間近に見える。時間が押してきたので記念写真を撮ってすぐに滑り始める。
上部は薄い新雪で滑りやすかったものの、すぐにクラスト&凍結した雪粒だらけの斜面になる。小久保さんが転倒して外れたスキーが流れていったが幸い20mほどで止まった。疲労のたまってきた脚にムチ打って転ばないように高度を下げる。出発時から全く緩んでいないガリガリ斜面を滑ってやっと旅館に到着。今回は雪質に恵まれなかったが、適度にコンパクトで滑って楽しい斜面が多いコースだった。
(石黒記)
【備忘録】
・中ノ湯温泉の登山者向けの安いプランで宿泊(1泊2食9000円)。温泉以外の全てで一般客と差別化が図られています。朝食は7:00から。チェックアウト後も駐車と荷物のデポはできるが、入浴は日帰り料金(500円)が必要。 (以上はH25.3時点)
・尾根と谷だけなので小船への方角を間違わなければ、ルートファインディングは比較的容易。
・距離は短いがそれなりに標高差(1050m)があるので、ラッセルが予想されるなら早立ちを心がける。
・滑るコースは典型的な雪崩地形なので注意すること。