2012年1月 安全講習会 報告

 安全講習は、天候にも恵まれ、予定通り無事に実施することができました。全員が真剣に、かつ和気藹々で取り組み、それぞれが得るところのある講習になったと思います。懇切に指導いただいた講師の村上さんに深く感謝いたします。また、たいへんお世話になりました安全推進委員の木村さんと猪俣さん、すばらしい宿舎を確保いただいた金子さんにお礼申し上げます。
(山行係担当: 野村、山科)

<講師コメント> 搬出訓練も3回目となりました。 参加者の多くは以前から参加されていますが、年に一度の訓練ですから忘れている事もあります。
しかし始まるとやはり前回とはスピードが違いました。途中いくつかのやり直しなどしましたが、おおむね完成形に近い形になりました。1回目の講習の時からあまり教科書に出てくるような事を丸覚えするのではなく、試行錯誤もしながらおぼえていただくことを大事にしました。事故が起きてもどのような形になってしまうか判りませんから、現場でどう対応するか判断をくだすのも大事な部分ですね。

A班記録

1/13(金)
野村車は上野毛20:00 練馬高野台21:30集合で片品村の民宿へ向かう。
沼田IC経由で12時35分すぎに到着。川久保車の2名はすでに早々ついて就寝中。温泉に入り、軽く一杯のつもりがやはり3時まで飲んでしまう。吉野車も3時過ぎには、到着したとのことだったが、バタンキューでまったく気がつかなかった。

1/14(土)
当初、8時半から講習の予定だったが、曽我部さんが夜勤明けで1時ごろ到着との連絡があり、30分遅らせて9時開始となる。講師の村上氏より、安全講習会も3年目なので、今年は精度をアップして「持てる装備でどこまで救助できるか」がテーマとの説明があり、初参加の自分は皆についていけるか不安になった。

室内講習
@V字コンベアベルトメソッド(雪崩埋没者の掘り出し)
注意点 ○ 深さ1m掘るためには役割分担などのテクニックが必要
Ex. リーダーを決める。
先頭が掘り、後ろ二人がその雪を書き出す。
○ 掘り出す雪面の上に乗らない(エアポケットをなくさない)
A心肺蘇生
心臓が動いているか確認する。
頭を上に上げ、気道を確保する。
アバラの3〜5cm上を真上から押す(心臓マッサージ)
レスキューが来るまで続ける
マウストゥマウスはやらないというのが最新の傾向だが、実施する場合、マウスピースがあると効率がいい。
B低体温症対策
お湯をペットボトル(プラテイパス)に入れて、脇の下等に挟ませ暖める。
C怪我の手当
 幅広の伸縮テーピングテープを活用
Dロープワーク実習
 エイトノット、ブーリンノット、インクノット、ハーフインクノット、マッシャー、フレンチ
E搬送
ザックを連結(カラビナ使用)し、遭難者を乗せる。
 ツエルトで全体をくるむ(インクノットアンカー使用)
 ロープをかけ、スリングで引く

野外実習 13:30より16:00まで
掘り出し→心肺蘇生・止血骨折の処置→保温→ツエルト搬送

感想: 最初は時間を急ぎ焦ったためすべて雑になり、搬送まで時間は早かったが、下に敷いたザックもでこぼこが多く、ツエルトでくるむのも適当なためあっちこっち足りなかったりして遭難者には辛いものになったようだ。ただ、脇下のお湯は温かく大変快適とのことだった。
講師より、練習だからもっと落ち着いて丁寧に、またツエルトがより滑るためにロープを遭難者の下に回さない方がいいとの指導があった。指導とB班のやり方などを学習して、3回目にはザックの連結なども遭難者の背中にフラ ットにあたるよう工夫し、ツエルトにかけるロープもV字を途中からクロスさせ、遭難者の腕の固定も顔の上にかかり呼吸を妨げないようにするなどしたため、初回より格段に上達した。やはり、練習を繰り返し熟達することが大切だと感じた。



1/15(日)9:00過ぎより13:00まで
野外実習  引き上げ訓練
@ 滑落者の自力活動ができる場合の救出
A 滑落者の自力活動ができない場合の救出
どちらも20mロープの3分の1引き上げ法での実習を行った。
A班において、@はなんとか引き上げられたが、Aで滑落者を背負った救助者の引き上げは時間が長くかかると救助者の体力がもたず難しい。また全く自力で動けない滑落者においては容易に引き上げられなかった。

感想:実際、山スキーの現実においては携行している道具でなんとかレスキューするしかないのだから、こうした訓練の有無の違いは大きいと実感した。講師より、「我々に救助された人は幸せですね」との言葉があったが、大きいに同感する。
    
(猪俣 記)



B班記録

1月14日(土)
午前中は宿で下記内容の室内講習が行われた。
@雪崩遭難者の掘り出しについての説明(V字コンベアベルトメソッド等の説明)
A心肺蘇生(心臓マッサージ・人工呼吸)の説明と実習
B低体温症(テルモスのお湯を使って) の処置
C止血および骨折の処置(額の裂傷を想定して止血・大腿骨骨折を想定しての周りにある物を使っての固定)
Dロープワーク実習
※エイトノット・ブーリンノット・インクノット・ハーフインクノット・マッシャー・フレンチ・スリングを使った簡易ハーネス
Eザックを使っての負傷者の搬送
Fツエルトを使っての搬送
G 20mロープの3分の1引き上げ法の実習

昼食後、夜勤明けの曽我部さんの到着を待ち、13時に屋外練習に出かけた。スキーおよびスノーシューで練習場所まで移動して、2班に分かれて午前中に室内で練習した事、主に下記内容を雪上で実施した。

@雪崩遭遇に対しての遭難者の掘り出し作業
A心肺蘇生の実施
B止血および骨折の処置(額の裂傷を想定して止血・大腿骨骨折を想定しての周りにある物を使っての固定)
Cツエルトを使っての搬送の実習

B班は最初に掘り出しから始まり、蘇生法の練習、そして川久保さんが足の骨を折っているという想定で搬出が行われた。ツェルトの上にリュックを3つ繋げて、遭難者はシルバーシートにくるんでからリュックの上に寝かせた。その上からツェルトでくるんで、メインロープを中央に結び、運搬用にはカラビナとシュリンゲを使って左右に引き綱を付けた。しかし途中で少々荷崩れ状態となる。
次は金子さんが遭難者となる。使用したものは同じだが、今度はメインロープを頭の方から足に向けてU字に回し、強度を強くするために体の上でクロスした。左右にシュリンゲで引き綱を付けるところは同じ。注文の多い遭難者で、苦しいのでエアポケットを作るようにと散々注文がきたが、腕の組ませ方、包み方など工夫ができてよかった。また、Uの字包みの方がしっかり包めて搬送の時も崩れなかった。2名のモデル遭難者の感想は、銀マットおよびプラティパスにお湯を入れて脇の下に入れておくのは非常に温かく、低体温症防止に役に立つだろうということでした。小型のホカロンも使ってみましたが、表面積が大きいためか、少量のお湯でもプラティパス方が断然温かかったようです。
16時に宿に戻った。今年はDVD鑑賞や夜の講習は行わなかったが、女性部屋では自主ロープワーク練習が行われた。

1月15日(日)
この日は朝8:30から野外に移動した。
まずはリュックを使っての遭難者の背負い方を練習し、また意識がない人を1人で背負う方法も行ってみた。B班では川久保さんを山科さん、吉野さんが背負ってみる。その後に高台に移動して、滑落者の救出訓練を行った。
まずは大西が滑落者、金子さんが救出に降りた。自力で歩けるという想定だったが、問題は上がるのか、止まるのか、上からの指示が聞こえず、どう動けばいいのかがわからずに戸惑った。金子さんは自分で歩かずに脱力状態で引き上げられたが、この時は声をかけるように努めた。
意識がない人にハーネスを作る練習をしてから、2回目は川久保さんが意識のない滑落者、山科さんが背負うために降り、女性3人で引き上げられるかどうかを試した。3分の1引き上げ方法を使うと女性だけでも十分に引き上げられることが証明できた。この方法だと、疲れて途中手を離して休んでも止まっているのは非常に楽だった。 最後に吉野さんが初めて雪の中で懸垂下降をして降りて、自分で歩かずに引き上げられた。
全員が1度は引き上げられる役をやり、引き上げにも加わったが、多くの人が3年目の経験だけあり、比較的スムーズに行えたと思う。最後に危険個所のトラバースの際のロープの張り方を実習して終わった。

13時に宿に戻って、いつものように入浴、食事を済ませて解散となる。やはり3年目だけあり、スムーズに行えるようになってはきたが、やはりロープワークなどは定期的に練習をしておく必要があると実感しました。

(大西 記)