前日3台の車に分乗して扇沢に入る。駐車場に2張りテントを張って仮眠。朝、風の音で目が覚める。天気は快晴だが風が強い。6時半起床。強風の中テントを畳み出発の準備をする。7時半のトロリーバス始発に乗る予定だったが一本見送って8時の便に乗車し室堂に向かう。黒部ダムについた頃には心配していた風も治まる。途中ロープウェイの大観峰駅で、3日目のコースの候補になっている御前谷コースのタンボ平へ下りるルートの雪の付き具合などを上から確認する。昨年よりも残雪は多く、尾根に上がれば問題なくタンボ平を黒部平に下れそうだったが、御前谷からのトラバースルートは尾根の反対側で全く様子が分からない。
10時に予定通り室堂に到着。前日から室堂に入っていた榊さんと合流し、今回の山行メンバー11人全員が揃う。ターミナルの外に出ると室堂平は風も穏やかで快晴、絶好の春スキー日和だ。雷鳥沢出会までスキーを滑らせて移動し、そこからシールを付けて左側の尾根を2班に分かれてゆっくりと登りだす。御前小舎まで標高差500m、上に行くほど斜度がきつくなる。最後の詰めは雪のない夏道を歩いて13:30剱御前小舎着。
ここからの眺めは「素晴らしい」のひとことだ。小屋の北側に剱沢が落ち込み、その剱沢の向こうに剱岳が凛とそびえている。そんな素晴らしいロケーションの中を滑るのだからたまらない。
この後、翌日の真砂沢滑降に備え小屋で休むグループと、剱沢を滑るグループに分かれて行動する。深井・猪俣・中川・室岡・田原・清水・竹内の剱沢滑降グループは、小屋でしばらく休憩の後、いらない荷物を小屋において小屋のすぐ北側の2792mのピークまで移動し滑り出す。本日最初の一本、剱沢をバックに剱沢の沢床まで150mを一気に滑る。春の快適なザラメ雪に全員気持ちの良いシュプールを刻む。そのあと剱沢小屋を右手に見ながら剱沢を滑ってその少し下2400m地点まで滑ったところでタイムアップ。
一時間かけて小屋に戻る。5時夕食。夕食後に談話室に集まって酒を飲みながら思い思いに寛ぐ。9時消灯。明日の真砂沢に思いを馳せながら就寝。
(室岡 記)
剱御前小舎上2792m小ピークから剱岳をバックに
今日も申し分ない好天で、小舎の窓から剱岳や後立山連峰が見事な眺め。榊さんは撮影のため早起きされたそうで、五龍岳の肩から昇る日の出の美しい映像を見せて下さる。少し風はあるが寒さは無く、絶好の山スキー日和。剱御前小舎から板を担いで真東方向へ稜線を歩く。左側に剱岳、右側に真砂岳から立山主峰群、更に右下には室堂から弥陀ヶ原、遠く薬師岳まで見え、眺望抜群のスカイラインに一同ご機嫌で殆ど夏道を歩く。途中の小さなコブの短い下り雪面も歩行アイゼンなしで慎重に下る。別山山頂を迂回するルートは雪面横断のリスクがあるため、忠実に稜線を登り別山に至る。祠の脇にザックを置いて背後の円頂に立つと360度の展望が得られる。北アルプスの主要な山々が望まれ、剱・立山では随一の展望台という定評も納得。
今回の山行の主題である真砂沢の滑降、まずは深井CLが別山山頂から南東斜面を回りこんで約100m下の肩まで滑る。下の深井CLから無線で露岩やクラックを避けるコースの説明があり、一人ずつ続いて滑って肩で集結すると、真砂沢が眼下に一望される。再び深井CL先発で真砂沢源頭の急斜面を滑る。最初の1ターンを慎重にクリアーすると、実に素直な雪面と分かる。既に日の出から4時間の日射で雪面がほど良く緩み、スプーンカットや縦溝の無い好斜面を約100m下って、すり鉢状の大斜面の底で集結する。見上げれば別山から真砂岳の岩稜が雪面と青空に映える。
ここから真砂沢上部はどの様にも滑れるが、おおむね沢芯のやや右岸を行く。八ツ峰の末端ピークが高まり剱沢が見え始める2000mくらいから下のゴルジュ部分は、多少のクラックはあるが、剱御前小舎で聞いて予想していた流水の穴も無く、豊富な雪に満たされた沢筋を滑り順調に剱沢との出合に到着。すぐ下に見える台地にある真砂沢ロッジは雪に埋まり影も形もない。
休憩してシールを貼り剱沢を登る。別山沢出合いを過ぎて剱沢の傾斜が強まると、剱沢の谷幅いっぱいに長次郎谷から押し出された多量のデブリが長く続く。長次郎谷出合いで2班に分かれ、年配組はそのまま剱沢を詰める。今朝、雷鳥荘から雷鳥沢を登り、剱沢を滑ってきたスキー協の一行と会い、剱御前小舎へ直帰する。(13:40到着)
午前中の晴れから午後は雲が増えて高曇りになったが眺望は健在。弥陀ヶ原を見下ろしながら雷鳥沢を滑る。雷鳥沢の上半部は全員一緒に沢芯を滑り、中間部から下は右岸尾根組と沢筋組に分かれ再び出合いで合流する。今朝、雷鳥荘を出発して一の越・雄山・真砂岳・別山を周回して来た韓国系の登山グループのにぎやかな話し声を聞きながら雷鳥荘に到着。
(直井 記)
− 長次郎谷登降班 記録 −
出合より剱沢を30分ほど登ると右手に長次郎谷が見えてくる。長次郎谷出合で深井さんが希望者を募り長次郎を詰めるグループとそのまま剱沢を詰めて小屋へ戻るグループと分かれる。深井さん、室岡さん、猪俣さん、中川さん、清水さんと私とで長次郎の熊岩を目標に1時間の行動計画で出発する。出合の時点で熊岩の上部に4名ほどのパーティが登高しているのが見える。近く見えたが実際登ってみると意外に斜度があり登るのに時間がかかる。最初は室岡さんがトップを登っていたが途中で猪俣さんに代わりガンガン登っていく。あまりジグを切らず直登ぎみに登っていく。
2番手の私は耐えられずに適当にジグを切る。途中剱沢グループと何回か無線連絡を交わすが沢筋なので途切れ途切れ。そうこうするうちに時間切れで熊岩を100mほど残して滑り降りることにする。みんなで次回は沢を詰めて頂上?を目指そうという話で盛り上がる。斜面は十分軟らかくたまに浅いクラックや縦溝・岩などがあるが注意深く避けて滑り降りる。下部まで滑ってくると出合に矢口さんとスキー協のパーティが休憩中。軽く挨拶を交わし彼らは先行していく。シールを貼り剱沢を登りはじめる。雲が切れると強烈な日差しが照りつけてくる。先行するスキー協パーティを捉えたのは剱御前小屋間近の斜面の手前。ランドネのパワーを示さなければ矢口さんもさぞ肩身が狭いことだろうとヘンな理屈をつけて必死に頑張る。じりじり照りつける太陽に汗が滴り落ちる。追い越すも何故か追い上げられる。先行グループの深井さん猪俣さん竹内はバテ気味で後続を心配するフリで休み休み登る。小屋が見えた、ラストスパート!なんとか逃げ切りハイタッチ! Good job ! いい汗かきました。
(竹内 記)
真砂沢上部の快適な斜面を見上げて (撮影:深井)
長次郎谷を滑る
当初の予定では御前谷コースのタンボ平から黒部平へ滑り下りるルートであったが、あいにく朝から雨で本日の行動はキャンセルとなった。私は温泉宿に泊まるといつもそうであるように6時前に目覚めて朝風呂へ。展望浴場の大窓に叩きつける雨滴を見て今日の行動は無理だと思う。みんな楽しみにしていたのに大変残念。食堂に集まり朝食を終えて1時間後に出発することになる。すでに玄関では同じように下山を決めた登山客でごった返している。スキーを担いで出発しようというときになって無料でスキーを室堂駅まで車で運んでくれることが分かる。ほとんど積み込み終わって出発しようというところでなんとか3台ほど積み込んでもらう。
玄関を出ると予想外の強風でまともに歩くのも大変だった。スキーを担いでいる女性陣はかなり苦労しているようだった。約1時間で無事室堂駅に到着。アルペンルートで扇沢駐車場まで戻り、ここでバス電車で帰途に着く榊さんと別れる。車3台で大町へ。薬師の湯で一風呂浴び軽く食事をしてそれぞれ東京まで帰った。最終日は山に入ることは出来なかったが大満足の3日間だった。来年も来よう!
(竹内 記)
行動ルート 21日:緑線、22日:赤線、23日:橙線