28日21時半に集合し、中央高速に乗り松本を目指す。ICを降り、1時間程下道を走り、25時過ぎに乗鞍観光センターに到着する。満天の星空の中、用意したテントを張り、軽い酒宴の後就寝。
5時20分に起床。お湯を沸かしカップラーメンなどを食べ、準備の後、出発地点の三本滝レストハウス駐車場に移動する。5/2からは位ケ原山荘までバスが出ているとのことだが、当日は三本滝でゲートが閉まっていた。準備の後7時過ぎに登高開始をするが、登り始めはスキー場の急斜面のため、板をザックに付けつぼ足で登る。40,50分ほど登っただろうか、スキー場のリフト終点を過ぎると緩斜面になり、シールを付けて歩き始める。高気圧に覆われたのか、快晴で暑く、また風もほとんどない絶好の山スキー日和である。4.5日前には寒気が入り雪も降ったようで、山がきれいに化粧し直していた。
薄着になり、気持ちよく登ったが、休憩時にリーダーから「こういう時に地図を見て確認をしなければ駄目だよ」と注意される。何と私は地図を別のカバンに入れたまま忘れてしまったのである。いつもは大人数の中、じっくりと地図とコンパスを見るのもできないでいるのに、こんな時に地図を忘れるなんて・・・と思っても後の祭りである。生返事のまま時が流れ、2回目の小休止の時には「地図も見ない人は、その内誘ってもらえなくなるよ」と2回目の注意をされる。その段階で地図を忘れた事を報告することになるが、とんだ大失態である。忘れたことと、すぐ報告できなかったことの2つの失敗を犯してしまい、反省・反省・・・ただただ恐縮するあまりである。
肩の小屋までは傾斜も緩く、春の陽気の中汗をかきながら気持ちよく登る。すれ違う別のパーティーも様々な格好で登っており、ゲレンデブーツでずっとつぼ足の人、アイゼンを付けた登山者、スノーシューにボード・・・等色々な人がいるようだ。でも皆一様に晴天の中日差しを浴びながら、気持ちよさそうである。しかし肩の小屋を越えたあたりから、さすがに3000m級の山、雪が固くなってくる。そして斜面も急斜面である。リーダーからクトー装着の指示がでる。ジグを切りながら、しっかりとクトーを食い込ませながら登る。私は、新しいシールに期待を馳せながらも、まだまだシール登高技術が未熟のようである。クトーを利かすためにクライミングサポートを使わないで斜登高をすると、へっぴり腰になりスキーに荷重がかからないようだ。荷重がかからないといくらシールの性能がよくてもやはり滑る。ブーツのバックルを上まできつく締めていたので、それを緩めるよう指示され、そうしてみるとへっぴり腰が直り、滑らないで登れることを実感する。こんなところで滑ったらどこまで落ちるのだろうと想像しながら、恐怖心と闘いつつも剣ヶ峰が少しずつ近くなっていく。
そしてやっと乗鞍岳の頂上、剣ヶ峰(標高3026m)に到着。時計を見ると12時20分を指している。別のグループと写真を撮り合いっこしたり、山頂神社に手を合わせたりして喜びに浸る。快晴で見晴らしも良く、360°の大パノラマ、御嶽山や北アルプスも良く見える。無風だったので、山頂で食事をすることになり、ガスでお湯を沸かし各自持ってきたカップラーメンを食べる。3000m級の山の山頂で食べるカップラーメンの味は格別であり、至福のひと時である。
1時間ほど経ったであろうか、そろそろ降りようということでスキーを履き、20m程下ったところで本日の大滑降ドロップポイントに立つ。広く急斜面だが、数日前に降った雪で柔らかく滑りやすそうだ。まずは室岡リーダーが先頭切ってテレマークスキーを走らせ、気持ち良さそうに滑ったかと思いきや、4ターンくらいで転び、そのままズルズルッと滑り落ちていく。皆アレッアレッと思いながらも、止まらない止まらない。50m以上落ちたであろうか、ジタバタしながらやっと止まった。
何で?と思いながら、私が次に滑ったら、何とそこはカリカリのアイスバーン。転びそうになるも何とか体勢を立て直し、後続の人に大声でアイスバーンであることを告げる。室岡リーダーのもとに行ってみると、腕に付けていたGPSがないとのこと。滑落時に落ちたようである。この固い斜面をどこまで落ちて行ったのだろうと考えながら、全員でGPSの捜索が始まった。しかし運良く70mくらい下の雪の柔らかいところで止まっており、埋もれることもなく見つかった。良かった良かった。それからは雪の柔らかい所を探しながら滑ったが、途中風で作られたであろうシュカブラもあり、気持ちよく滑れたのは意外に少なかった。そのうち緩斜面のザラメ雪になり、気持ちよく一気に滑り降りる。あっという間にスキー場の上部に出て、道路で雪が切れているところは板を脱ぎながら、残り少ない滑走を楽しむ。2時半頃三本滝レストハウス駐車場に無事到着。
帰りは乗鞍温泉「湯けむり館」に寄り、乳白色の硫黄泉に浸かって疲れた体を癒し、5時過ぎに帰路に着く。帰りは中央高速の渋滞も思ったほどでなく、無事に東京に着き解散した。今回は天候に恵まれて、持って行った歩行アイゼンも使うことなく、気持ちよく山頂に登れた思い出に残る山行だった。
(角田 記)