2009年3月 巻機山・トトンボ沢 会山行報告

巻機山から奥利根源流側のトトンボ沢を滑りました。このコースはメンバー全員が初めて。いろいろ悪条件も重なった中、強力なメンバーに助けられ無事ツアーを成功させることができました。

3月28日(土)

11:30 清水集落〜12:00 巻機山山頂〜13:40 下トトンボ沢脇テン場(1080m)

車を「やまご」に駐車させてもらい、本隊に遅れること約1時間半で清水集落を出発。かなりの積雪があるが先行する本隊のラッセルのおかげで楽に登ることができた。なんとなくペースが上がらず、本隊がニセ巻に戻ってきたところでやっとすれ違う。山頂付近はほぼ無風で絶好の天気。翌日の天気が良くないようなので、山頂付近にテントを張り翌日トトンボに降りようかとも考えたが、この機会を逃すと次はいつになるかわからないので思い切ってトトンボ側に下降した。
滑り出しは無木立の広大な斜面。多少重めながら雪質が良く最高に楽しめた。大斜面が一段落した1700m付近から次第にモナカ雪に変わってくる。視界が良いのでコースは一望できるが地図で見るより地形が複雑でコース取りは難しそうだ。標高が下がるにつれて雪はさらに重くなり疲労のたまった脚にはきつい。
滑りを楽しむにはほど遠く、なんとか標高を下げていると下トトンボ沢に合流(1080m付近)。そこだけ沢が割れている。たっぷり水を補給し予定していたテン場に向かおうとするが、ちょっと上の台地がテン場適地だったので本日の行動をここで終了する。希さんを除いてとりあえずビールで乾杯。風もなく静かな夕暮れだ。
夕食はヴォルフ渾身のスープスパ。ソースだけでも3kgくらいありそう。ちょっと焦がしてしまいヴォルフは落ち込むが大変美味しかった。静かなトトンボの夜をゆっくり楽しもうと思っていたが、いつになく疲れきった私は不覚にもお酒を飲み尽くす前に寝てしまう。静かでないと眠れない深井さんは一人ツエルトで就寝。夜半から雪が降り始め、風も強くなってきたようだ。


3月29日(日)

10:00 テン場 〜 10:35 トトンボ支尾根取り付き 〜 13:15 トトンボ尾根(標高1478m)〜15:10 米子頭山 〜 17:15 深沢源頭(標高1500m付近)〜 16:30 深沢堰堤(林道)〜19:00 清水集落

起きてみると視界が悪く風も強い。テン場回りでは30〜40cmくらい雪が積もっている。天候の回復待ちと約800m登り返せば稜線に出られるという気安さから出発は10時と遅めになる。本来のテン場予定地(1000m)まで降りてからトトンボ尾根の支尾根に取り付く。地図では簡単に登れそうに見えたが、実際の地形は複雑で一筋縄では行かない。急傾斜をラッセルし、最後は雪庇を乗り越えて小ピークに出る。ツボ足で藪を越えるとやっと登りやすい斜面になる。
ここからは順調に標高を稼ぎ1478mで主尾根に合流。傾斜は緩くなり天気も少し回復してくる。稜線まで順調に登れそうだと安心していると米子頭山の直下はかなりの急斜面。しかも氷化してギラギラに光っている。ヴォルフはクトーが壊れているので歩行アイゼンを持ってきたが他はクトーしか持っていない。クトー登行の限界を越えた急斜面をなんとか全員無事にクリアする。落ちても死ぬことはないだろうが200〜300mは停まりそうもない斜面で久しぶりに怖かった。
なんとか稜線にたどり着いたものの強風で視界不良。本来は稜線を南下して柄沢山手前から涸沢川に降りる予定であったが、すでに15:00を過ぎていることもありショートカットして深沢に降りることにする。稜線直下は強風で雪が飛ばされてブッシュが出ているうえにガリガリに凍っていてとても滑ることができない。
傾斜が一段落するまでシール、クトーをつけたまま降りる。ヴォルフはアイゼンがあるので楽々降りることができてうらやましい。視界が悪くて地形が良くわからない。これはまいったなと思っていると少しずつ視界が良くなってきた。しばらくしてやっとシールを外して滑り出す。ここからは悪雪に苦労するものの概ね順調に下っていく。幸い天気は回復し陽も射してきた。最近降った表層の雪が不安定でいたるところでスラフが発生する。途中で登り返しもあったがなんとか深沢の源頭付近1500mにたどり着く。あまり時計を見ないようにしていたが、藤澤さんが「もう午後5時ですよ」というのを聞いてさすがに心配になる。陽はだいぶ長くなったがまだまだ先は長い。しかも久しぶりのテント泊装備と悪雪に苦しめられてだんだん脚の踏ん張りがきかなくなっている。
深井さんに先頭を滑ってもらい、ヨレヨレになりながら滑ってくると大きな堰堤が見えてきた。堰堤の向こう側には作業用道路も見えている。あそこまで行けば一安心だ。沢沿いに降りると谷が狭まって行き詰まる。最後まで楽をさせてもらえない。右岸の尾根に登り返そうとしたが急なのであきらめ、スノーブリッジを探して左岸に渡る。沢沿いにかなり危険なトラバースをして砂防ダムを越え作業道に到着。この時点で18:30。真っ暗になる前になんとか林道に出ることができた。この後は延々と林道を下る。脚は限界近くに疲れている。
19:00ちょうどに「やまご」に到着。泊まっていないのにお茶と漬け物で歓迎して頂く。初日の本隊のラッセルと強力なメンバーに助けられて念願のトトンボを滑ることができ大変感謝しています。

(記録:石黒)