前夜、赤羽駅前で集合して東北道を一路北上中は雪無しの路面で快晴の月夜だったが、松尾八幡平インターから山道にかかると、うす雲に月がぼんやりし始めて路面が白くなり、ちらほら雪が降る。松川温泉奥の除雪終了点で道路上にテントを張る。
除雪終了点に車とテントを残して松川荘まで歩き、板を履く。松川荘から川沿いに少し下流方向へ歩いて尾根に取付く。ブッシュが密な所を回避しながら湯ノ森から北北西へ伸びる尾根に乗ると傾斜が増し樹林も密になる。やがて傾斜がゆるくなると湯ノ森のコブに至って樹林もやや粗になり、八幡平らしい穏やかな山容となる。強風がごうごうと吹きつのり、靴半分ほどの軽いラッセルで高度を上げる。樹林が開けて風当たりが強くなるにつれて雪面がガリガリになる。傾斜が緩くなって姥倉山頂もあと僅かという肩で「これ以上登っても、滑りは楽しくないから」とのリーダー提案に一同異論なく登高終了。烈風とガスで展望はない。
地吹雪のなか、装備を飛ばされないように注意しながら滑降の支度をする。肩から南西へ少し斜滑降して浅い沢地形に入り、登高ルートの西側を滑る。粉雪の舞い上がりはないが、足首ぐらいまでの新雪でまずまずの滑り心地。上部の烈風下ではとても平常心が保てない。少し高度を下げると強風が収まり人心地ついてほっとする。1220m付近でさっき登ったルートを横断して北面の沢に入る。次第に樹林が密になる1030mまで滑る。
シールを貼って200m登り返し、帰路に入る。緩やかな湯ノ森のコブは3度目のシールを貼って登り返す。湯ノ森からの下りは北北西へ伸びる尾根を今朝の登高ルート近くで滑るが、ブッシュが密で傾斜もあり、とてもターンできず何度かキックターンを繰返す。もう一度シールを貼って登り返すのを避け、尾根末端のコブ手前を斜めに下って今朝の取付きへ帰着。テントへ戻り、入浴セットを持って松川荘で一浴する。
朝食を終えてテントの外で出発支度をしていると、タイミング悪く(良く?)道路除雪車が来る。テントの撤収と藤澤車の移動を要請されて急遽あわてる。夜通しの新雪が30cmほど積もり、膝下ラッセルの林道を西進して昨年と同じ所から源太ヶ岳に取付く。上倉沼南方肩1146mから明瞭な尾根上を登ると、樹に赤ペンキの丸印が散見されて夏道であることを知らせてくれる。膝ラッセルになり昨年のペースに及ばない。
その後、地図上の夏道ルートにしては平坦過ぎる?と疑問だったが、上倉山南西1330mで小休止の折に現在地の確認で、夏道より北へ大きく迂回の為と分かる。ここで、深井さんが念入りな積雪調査をすると、約1m下に弱層。コンプレッションテストで露出した滑り面を指先で叩くと硬く手応えある。ところが、垂直断面を指先で触れても、この弱層は硬さの手応えない。弱層が薄いからとか。こんな事もあるんだ。ここから進行方向を西南西に振って、源太ヶ岳の東斜面基部へ向かう。今日も強風とガスで展望はない。樹林がまばらになり、雪面が硬くなり始める1390m(1384m点北方40m)で登高終了。
まず南南西へ斜滑降で移動して、1370mからリーダー推奨のオープン斜面に入る。新雪深雪でほどよい斜面を滑り全員ご機嫌。リーダー先発で滑っていくと、すぐ左脇で雪崩と言われる。見ると深さ50センチほどで馬蹄形の破断面・幅7,8m・長さ10数mの雪崩。滑って来て、小さなコブの下側傾斜面が上から見えないので、リーダーがコブのすぐ手前を右側に振って少し滑るとコブから雪崩れたとか。コブを直進していたら危ないところだった。
1110mまで快調に滑って深雪を楽しみ、シールを貼って上倉沼南方の台地までほぼ水平に歩き、最後の滑りで今朝の取付き点すぐ東側の林道に戻る。この途中でも小さな雪崩を誘発するが問題ない。強風で今朝のトレースが殆んど埋まった林道を下る。テントを張り直して、今日は松楓荘で一浴する。
待望の晴天となる。テントを撤収して、車で八幡平リゾートパノラマスキー場へ移動する。岩手山から八幡平までの連山が見える。正面の屏風岩の右肩・赤倉岳は上部が急峻で露出し多分ガリガリなので、その手前が今日の目標。長いリフト1本の終点から緩い傾斜の疎林を登る。一昨日の姥倉山に似て雪面は硬く、樹林帯ながらウィンドクラストして波状面が多い。次第に樹林が開けて傾斜の強まる赤倉岳手前1350mで定刻になり登高終了。西と北の展望が利き、大深岳から八幡平までの主稜線や茶臼岳・安比までよく見える。源太ヶ岳東斜面の昨日快適だった雪面を復習する。
1120mぐらいまで登高ルートを滑ってからスキ−場すぐ西で北北西へ下る沢へ入る。予定ではこの沢の左岸を滑るつもりだったが、そのまま右岸を滑る。所々でブッシュが密になり、傾斜が緩いので手押しも時々ある。明瞭な切り開きの林道でスキー場中間部へ戻り、圧雪されたゲレンデを滑って山行終了。スキーハウスに隣接のホテルで一浴する。
全国的な暖冬・雪不足で、覚悟半分・期待半分だったが、そこそこ深雪も楽しめた山行でした。
(直井 記)
《深井さんのコメント》
事前気象情報(岩手松尾アメダスデータ)によると、1月19、23日に雨、その後25、26日、30、31日、3日に降雪があった模様。その他の日には、日照があり夜間の気温は低下している。
当日現地では約1300mの北東斜面でコンプレッションテストを行うと「CTH(23)SP@72cm↓on□/」の結果あり。時間がなく、他の地点でコンプレッションテストは行えなかったが、ストックテスト他の結果では日射の影響が強い斜面ほど新雪下のサンクラストが厚く、こしもざらめも発達し、不安定性を示した。
クラス1情報としては、標高1200m東斜面でリモートトリガーにより面発生雪崩発生。サイズは1.5、発生区はノール状地形、破断面は約50cm↓on□。他にも、標高1000m南東斜面でスキーカットにより面発生雪崩サイズ1。積雪安定性は森林限界でPoor、樹林帯でFairの評価をし、日射の影響ある、ノール状地形、急斜面のS雪崩に注意し行動した。地形移動の際の留意点としては、急斜面、岩の周囲、ノール状地形、沢状地形を避け行動した。