2007年5月 剱岳・立山周辺 会山行報告

5月25日(金) 天候:雨

扇沢駅7:30発 ⇒(立山黒部アルペンルート)⇒ 室堂ターミナル集合9:20/50 →雷鳥荘10:30(泊)

前夜、大坪・潟見・由布は扇沢にて仮眠。朝6時には雨が降り出す。 アルペンルート途中の黒部平駅で、27日滑降予定の東一ノ越からタンボ平斜面を観察。春の降雨が北アでは雪となった為か例年並みの残雪との事。大きなデブリ・雪庇は見られず表層雪崩跡が幾筋かあった。ロープウェイ下のブッシュが少しうるさそうだ。 先に入山していた榊さんと室堂ターミナルで合流。外はかなり強い雨。今日の予定地、剣御前小舎へは無理と判断、雷鳥荘泊に変更となる。ガスと雨の中、スキーを肩に歩き出す。歩いていれば寒くは無いがスキーを持つ手が冷える。10時半には二階まで雪壁に埋まった雷鳥荘に着いた。ますます強くなる雨にすっかりスキーをあきらめ、早々と新しい展望温泉に浸かり、沈殿。


5月26日(土) 天候:晴れのちガス・強風(稜線上) 夕刻快晴

雷鳥荘7:00発 → 剣御前小舎9:35/10:10剱沢滑降開始 → 滑降終了地点(平蔵谷出会手前)10:45/11:00登り返し → 剣御前小舎13:20/14:30雷鳥沢滑降開始→ Tバーリフト前15:10 → 雷鳥荘(泊)

朝から予報どおりの青空になった。余分な荷物は宿に置き、まだ凍っている称名川を渡って雷鳥沢に入る。雪質は適度な硬さのザラメ雪。シールも良く効くが登るにしたがって固くなり、氷化した部分が出てくる。しかもツボ足の跡が凸凹してスキーアイゼンを効かせにくい。風も強くなった。4月18日に雪崩死亡事故があった場所を確認しながら、谷の左側へ寄り稜線鞍部の剣御前小舎へ上がる。 強い風を避けて小舎で休憩。スタッフの方に昨日のキャンセルを詫びると、やはり相当天気が荒れ風速30mあったとか。休憩料もとらず、茶菓を出していただき快い応対だった。
剱沢は昨夜の雨でリセットされ、朝日があたって極上のザラメ雪だった。しかもノートラックの広々とした爽快な斜面。写真を撮りながら自由に滑る。またたくまに峻険な剱岳の尾根が近づき、平蔵谷手前でストップ。デブリで雪面が荒れ、大小の岩屑が散乱していた。
登り返しは声の届く範囲で、各々のペースで歩く。剣沢小屋を過ぎる頃から稜線一帯はガスに覆われ、突風を伴った強い風に悩まされた。急な天気の変わりように驚く。耐風姿勢をとる間も無く横風に倒された程だ。剣御前小舎に逃げ込み様子を見るがいっこうに収まらない。リーダーと榊さんが雷鳥沢上部の状況を調べに行き、強風は稜線部だけと判断し午後の氷化が始まる前に下降開始。板をザックにつけ雪面まで慎重に10m程降りる。雪の状態を確認し、スキーをつけて横滑りでさらに降りると風は弱まった。ガスの中を離れないようトレインで滑る。間も無くガスから抜け出し、雷鳥平のTバーリフトまで称名川を上流に大きく迂回して渡り、16時前に雷鳥荘に戻る。日が落ちる頃にはすっかり晴れ上がり、奥大日のピンクの雪肌が展望風呂から眺められた。


5月27日(日) 天候:晴れ

雷鳥荘7:05発 → 一ノ越山荘9:00/40 → 東一ノ越10:35/11:00 → 黒部平駅11:45 ⇒(立山黒部アルペンルート) ⇒扇沢13:10

一ノ越に向かう途中、榊さんお知り合いの関西の山スキーパーティに会う。昨日は真砂沢を滑り、下部の雪割れの為登り返したそうだ。今日は同じ一ノ越から雄山をめざし山崎カールを狙うそうだが、あいにく稜線はガスがかかってしまった。
風とガスの中、竹竿を目印に一ノ越山荘に着く。御山谷側も視界が悪い。小屋の情報では東一ノ越への夏道は出ており昨日下降した人も在ったとの事でリーダーはGOサインだ。


一ノ越から東一ノ越経由タンボ平へのルート図(石黒さん作成のHP電子国土を利用して作成) 強風に煽られながら板をつけ、榊さんをトップにガスの中に滑り出す。先に出た単独の青年と前後しながらトラバースを続け、高度計で当りをつけていくと2,500m付近で夏道の端を捉えた。そこからは板をザックにつけ、ゴロゴロした石の夏道と何本かの雪の斜面を切って歩いていく。次第にガスが晴れ足元が見えるとものすごい高度感だ。風に振られないよう緊張する。
東一ノ越からは、黒部湖まで全部見渡せた。ルートの説明が大坪リーダーからあり、出だしの右トラバースは斜滑降で一人ずつ通過する。
タンボ沢へ入らぬよう高度を下げながら滑り、なかなか気分がいい。中間部の洗濯板状の溝も浅く、ロープウェイの乗客や大観峰、黒部平の展望台にいるギャラリーを意識しながらトラバースしてタンボ平へ。下部のブッシュも問題なくスキーで滑ることができた。黒部平駅の階段前で板をはずしメンバーと感激の握手。ああ、終わった!

(由布 記)

リーダー補足:
関西の山スキーパーティは兵庫県スキー協の釣さんと島さんを先頭とする5名でした。また今年は一ノ越の祓堂も雪に埋まっており、東一ノ越へのトラバースも上記地図にある通り、ほぼ夏道の中間(標高2,500m)まで滑れて歩きは楽でした。

初めての春スキーで中級にチャレンジする方へのメッセージ

○急変する天候への準備・・・替え手袋はもちろん帽子、下着など防寒防風の準備が必要
春スキーの写真では薄着に日よけ帽ばかり目立つが、荒天時は冬に戻る事を忘れずに】
○ゴーグルがすぐ曇ります・・・できればファン付きが良い。
○シールにはワックスを・・・春の雪はシールがしっかり水分を含みます。乾燥室ではシートを外した方が糊移りしません。
○スキーアイゼンの着脱に慣れておく・・・融雪と氷化を繰り返す季節です。
○ザックへの板の固定・・・強風時でも安定した素早い取り付け方を工夫しましょう。
○ザラメ雪は最高・・・ゲレンデのように滑れます。思い切ってワンランク上にチャレンジ!
ただし危険箇所も多いので、急斜面横滑りと斜滑降、キックターンのマスターを】