2007年GW 北アルプス黒部 個人山行報告

4月29日(日)

木村(あ)さんの黒部山行計画であったが日程が合わなくなり長坂班との2班で結成された。
 29日御殿場を10時出発。本日は飛越トンネルまでの移動であり、途中松本で買出しをして飛越に15時到着。トンネル間際まで車が入れる事を確認し傾斜の少ない車道でテントを張った。周りには食べごろのフキノトウが芽を出している。


4月30日(月)

飛越トンネル7時―北ノ俣避難小屋13時

登山口から夏道を登り出し30分後くらいでシール登行可能となる。絶好の山スキー日和であるが登りには暑すぎる。寺地山を効率良く廻り込み尾根筋を滑り込みトラバースしながら小屋に着く。時間を持て余しぎみで小屋で過ごしているところに、遠慮がちに小屋の宿泊状況を確認するパーティーがあり、我々しか居ない事を伝えるとテント泊を小屋泊まりにした二人が入って来た。
長坂さんと顔をあわせると、元会員の棚田さんご夫妻であることが判明。昨日は木村さんともお会いした事、古い(失礼大先輩の)会員の方々の現況などで盛り上がる。最近は岩登りが主流の様子。天気予報では午後から崩れるとの予想から早めの出発を考え早々に就寝。


5月1日(火)

小屋5時50分―登攀中止7時10分・・・北ノ俣避難小屋7時30分

棚田さん夫妻と記念撮影後登り出す。予想がはずれ早々に雪模様となり、遂に雨まじりの霙となり、小屋に戻る事に決定。


5月2日(水)

停滞

朝から降ったり止んだりの天気で視界も極端に悪い。
 こんな日は登山者は居ないだろうと思っていたら3人の若者テレマーカーが現れる。飛越から登りだし休憩して太郎小屋を目指すとの事。心優しい長坂さんがカフェオーレをご馳走する。しかし若者たちは数時間後、3時間で稜線にでたが小屋方向が分からずとのことで戻ってきた。食料がすごい、生米、キャベツ丸ごと1個、若さには勝てない。


5月3日(木)

北ノ俣小屋7時10分―北ノ俣岳9時10分―黒部五郎岳北面下部11時15分―黒部五郎小屋13時35分

天気予報通り快晴。バーンは硬いがクトーが効いて登りやすい。北ノ俣岳乗越手前で先の3人組が歩行アイゼンで登っている形跡を窺う。北ノ俣岳頂上で記念撮影。長年通い慣れた長坂さんより、今までで一番雪が多い年であることの説明を受ける。薬師沢出会方面、昨日棚田夫妻との会話に出ていたお勧めの赤木沢を確認し、いつかは上ノ廊下をと想いつつ進む。
 黒部五郎岳北面下部で、バーンが緩むのを少々待つ事にして長坂さんよりルートファインディングの講義を受ける。見上げていると、黒部五郎岳から、鞍部中央部に移動し下降を始める3人組がいる。最後がテレマーク滑りであり木村班と判断。木村さんの華麗なる滑りに続いて、少々くたびれている2人。2班がやっと合流できしばし歓談できたがそれにしても2日間の停滞が悔やまれる。別方向に別れ北面を登る。以前も苦労した場所でありそれなりに考えて登るが、長坂さんからは合格点を頂けなかった。
 黒部カールを思い思いに滑り、カール下の大岩から振り返るが、今年は雪庇は出ているがまだ落ちていない。大トラバースを行い、小屋手前の尾根へ出て最後の滑り。長坂さんと二人だけのシュプールを描き本日終了。その後2人増えてこの日の宿泊は4名。


北ノ俣岳山頂にて


5月4日(金) 天候:

小屋5時―黒部源流手前6時10分―黒部源流分岐6時50分―岩苔乗越8時15分―水晶小屋手前9時20分―岩苔乗越雪庇超10時・・・祖母沢出会11時20分―五郎沢出会―小屋13時50分

今回のハイライト東沢谷に向かう。当初五郎沢を一気に祖母平まで降り黒部川を遡上する予定であったが、長坂さんの昨日の下見で、雪が多く黒部川左岸側を源流までトラバースすることに予定変更。途中沢のデブリの乗越、藪漕ぎ・・、スリリングである。長坂さんのルートファイディングは(失礼であるが)動物的感性と感心する事しきりである。
約1時間で源流部まで移動でき、時間的な余裕ができた。源流部にテントを張っているパーティーがあったが、岩苔乗越手前での休憩時素晴らしい風景を目にして理解できた。三俣蓮華岳、三俣小屋、双六岳まで見える。今回自分なりに目標にしていた黒部源流は考えていた以上であり、声も出ない。
 岩苔乗越に出ると状況は一変し強風である。ワリモ岳からつながる2841mを岩苔小谷沢を見下ろしながら、魚の鱗状の氷で覆われた斜面を慎重にトラバース。2841mの東面を覗くと滑ったトレースがある。水晶小屋を目の前にして、ここからは歩行アイゼンでの行動となり往復歩行になる事について風を避ける窪みで協議し、ここで登攀中止を決定。東沢谷は宿題となった。岩苔小谷沢を滑り、再度岩苔乗越へ登り返すことにするが北面と強風のため雪質は緩まないとの判断からそのままトラバースして、雪庇が小さいところから鞍部に出る。長坂さんの後なのにてこずりなかなか乗越っせない。1時間時間をやると言われるが・・・・。 
休憩後の、本日の滑りのハイライトである岩苔乗越から黒部源流までのロングランは長坂さんと二人だけの貸切状態だった。一気に滑り降りては勿体ないので、写真撮影などしながらゆっくり進む。黒部川を祖母平まで向う。デブリが多く、今朝方のトラバースは大正解だったとあらためて感じる。
 前日の雨と本日の好天で、祖母平に近づくほど川の音が大きくなり口が大きく開いている。黒部川右岸を下ったが、スノーブリッジは無く遂に祖母沢出会い前でスキーをはずし徒渉する。ゆっくり五郎沢を登り返し本日の行動終了。冬山登山のガイドツアー付き女性6名パーティーが加わり、小屋はしばし喧騒状態。我々より30分くらい早めに出て薬師沢出会から薬師岳へと出かけたつわものが17時に帰って来た。昨日、飛越から入山し直接小屋まで来て、小屋の周りで2本もシールと横歩きで登って滑り込むつわもので、先週は飛騨沢で30cmのパウダーを滑り岳人にもルート紹介している地元高山の方でした。

5月5日(土)

黒部五郎小屋6時―黒部五郎岳8時40分―北ノ俣小屋12時50分―飛越トンネル 16時

2時くらいまで星が見えていたとのことであるが、ガスっている。戸締りをして出発。
五郎岳まで尾根沿いを進む。途中ガスが切れて一望ができるくらいまで回復してきた。五郎岳への最後の登りでは、雷鳥が出迎えてくれた。黒部五郎岳山頂で記念撮影し帰路を急ぐ。まだ硬い五郎北面を滑り北ノ俣岳へのルートを相談する。出来るだけ登り返さないよう長坂さんのルートファインディングで北ノ俣岳へ到着。北ノ俣岳避難小屋でデポ品を回収し、辛い辛い下りの後、上飛越トンネルに無事到着。
栃尾温泉で民宿に宿泊。露天風呂、ビール、刺身・・などなど極楽気分。軽量化のための乾燥物の食事が続いていたので、大満足の最終日であった。


5月6日(日)

翌日は、飛騨牛の串焼き、昼は富士吉田のうどんを食し思い残す事無く帰路に着いた。

今回は木村(あ)さんリーダーの山行であったが、出発日のずれ・悪天による停滞により別行動になった。北ノ俣小屋は小さいが水洗トイレ、ボランティアによる小屋の整備がなされ快適な2泊であった。


黒部小屋から岩苔乗越

(阿部 記)