「志賀高原初滑り」は雪不足のため「三斗温泉忘年山行」と目的も行先も一新し大勢の参加者を募るも、集まったのは60歳台4名(内1名は間も無く60台)と40歳台4名の男ばかりとなってしまった。
東京組5名は赤羽に6:30集合藤澤車に乗り込む。大丸駐車場 8:30集合に遅れぬよう頑張るも、覆面パトカーによる渋滞もこれあり9時到着。筑波博士組の出迎えを受ける。山は昨日の雪でそれなりに冬山の装い。
不要のアイゼン等は車に残し、必要なビールは手分けし担ぎ出発。途中新旧交々のスパッツをはき快調なペースで峰の茶屋に到着。夏道通りに頭上を注意しつつ剣が峰を巻き朝日岳・能美曽根のコルへ向う。途中ザックがビール漬になるという惨事もあったが、12時に朝日の頂上に立つ。遥か遠くに尾瀬燧ケ岳を望む。
朝日岳より徐々に積雪が多くなりラッセル(break trail)となる。上林Leaderは"mountain goat"の如く雪を蹴散らして進むが、記録係はついて行けず。氷雪飾のシャクナゲのトンネルで身長192cmのBig Chrisのラッセルの番となったが、我々日本人が腰をかがめてラッセル出来るところを彼は背が高過ぎるので匍匐前進で進んで行った。小柄なDr. Kの感想によると、Dr. Kは常日頃(若い時は特に)背が高くなり女の子に持てる事が夢であったが、Chrisの今日の姿やテントでの窮屈そうな姿を見ると、背の低い事を感謝する気になるそうである。それでも三本槍岳に何とか到着。
三本槍にて三斗小屋に雪の状況を携帯で問い合わせた所、大峠からのトラバース道は雪が多く相当時間がかかるとのこと。打ち合わせの結果、少し戻って能美曽根―隠居倉のルートを取ることとする。早速元来た道を引き返す。これで温泉に浸かれると足取りも徐々に軽くなり隠居倉の下りは飛ぶが如く、とはいかないが何とか今夜の宿に到着。三斗小屋はなかなかに風情のある旅籠風の宿です。
何はさて置き、温泉に直行する。大浴場は二つの湯船があり、湯加減は熱目と普通目。“滑るよ“の声に、板張りの床をそろそろと普通目の湯船にチャポン。隣の熱々には約3名の猛者が茹っている。それではと熱め入るが、馴れるとこれが又良い。子供の頃風呂はいつも熱かった。”インデアンの蒲焼“を10回繰り返して飛び出したが、風呂が熱かったのか?はたまた皮が薄かったのか?遅れてBig Chrisが入ってきた。普通目にも入れず外で湯をかけている。日本人にとっては普通でも、アメリカ人には熱いとのこと。熱目の風呂に上せせた記録係は早々に上がる。
脱衣場で冷ましているとガラス戸の先にうら若き女人の姿が、風呂に誰かいるの?と話す声も。女人は突然ガラス戸を開き私(前はタオルで隠してはいるが裸)を見ても平然と”空いてますか?“と聞かれ、”混んでます“と言ってしまった。残った皆さんのためには”空きはあります“と言うべきだったと反省。
風呂の次は食事と宴会。夕食はお膳で運ばれ部屋での食事。全員が集まり各自持ち寄りのビール、フランス&スペイン・ワイン、屋久島焼酎でリーダーの敢闘と判断力に乾杯。英語も飛び交うインターナショナルな会話の中、話題はパタゴニアとエイズ。何せパタゴニアの権威とエイズの権威がいらっしゃる。皆パタゴニアに連れていって貰おうと色々売り込むも色よい返事は無く、夜も更け漸くお開き。よく見るとBig Chrisは立ち上がると旅籠の天井に殆ど着いている。192cmはやはりでかい。
夜半に雨音が聞こえたのは気のせいか?耳鳴りか?今日は雨と思っていたが何とか天気はもっている。朝風呂(一部の人のみ)、朝食を済ませ宿の清算を終え土産の飴を貰って遅めの出発。
途中「延命水」と立札のある水場で当然の如く中高年はしめしめと延命を図る。すぐ隣に標識の無い水場が?誰か飲んでいたが、これは短命水。皆さん快調に岳樺一色の林の中を登りつめ振り返ると昨日下った隠居倉が目の前に。Professor曰く、倉は岩の意、だそうで、確かにこちらから見ると岩場が見える。そういえば広島のゲレンデに三倉岳というのがあったのを思い出す。難なく風も無い峰の茶屋に到着。
茶屋にはお鉢周りに出かけた学生パーティーのものか?重そうなザックが並んでいる。茶屋で一服し茶臼岳に向う。登るにつれ雲が切れ頭上に青空が出てきた。最後の突き上げをキックステップで稜線に抜ける。茶臼岳で暫しの休憩の後、四方を眺めお鉢回りを楽しむ。茶屋への下りでは力を持て余したMountain Goatが突然駆け下り、残った都会の羊たちはあわてて後を追う。峰の茶屋で息と隊列を整え整然と大丸駐車場経由“今度こそは”の弁天温泉へ向う。弁天温泉は何故か1時間の制限付き。熱い内湯と、広い円形の露天風呂、甕湯、等々ありのんびりと1時間の極楽を楽しむが、弁天様はどこだ?
打ち上げは那須塩原市青木の石臼挽き自家製粉・本格手打ち蕎麦の“季流”へ。何とか探し当てたが店じまいの最中。蕎麦は売り切れで、うどん・丼・蕎麦掻は出来るとのこと。蕎麦に未練は残るが空腹は耐えがたく打ち上げ場所とする。
「初滑りは」できなかったが、雪の那須岳は風も無く、天気もまずまず、Leader・Sub-Leaderの奮闘もあり、初冬に相応しい清清しい山行となった。蕎麦湯で乾杯。
そういえばリーダー指示で一人を除き皆さんビーコンを持参したのに、ビーコン練習はどうなったのか?
(和田 記)