扇沢(07:30)=トロリーバス=黒部ダム(07:45/08:00)−内蔵助谷出合(09:50)−
内蔵助平(13:00)−ハシゴ谷乗越(15:00)−真砂沢ロッジテント場(17:00)
前日の13日深夜、ヤナバにある和田の母校の山荘に到着。立派な建物で寝具・電気・水道など至れり尽くせりで驚く。
翌朝はアルペンルートの一番にあわせて山荘を出発。扇沢は観光客でいっぱい。山の上はうっすらと雪化粧。満員のトロリーバスに揺られて黒四ダムへ。黒部川方面の登山者出口に気づかずちょっと遠回り。ダム出口に出ずバスを降りトンネルを先に行くと登山者用出口だった。
怪しいトンネルと藪を少々通過して(どこの道だ?!)黒部川へ降りる。橋を渡るとここまでダム放流の水しぶきが飛んでくる。黒部川の急流を下に見ながら、落ちないように進む。出発の黒四ダムのところで1パーティー(日帰り?)・途中で1人に抜かされた以外、人はいない。まったく静か。内蔵助谷出合でテント発見。抜かされた人のか??
内蔵助谷を登るわけだが、これがきつい。細かいアップダウンがありなかなかペースがあがらない。それでも、木々は色づき、空は真っ青、日本の秋に癒されながら進む。内蔵助平に入ると雪をかぶった山が目に飛び込む。内蔵助カールは結構積もっているようだ。やはり雪景色はいい。内蔵助カールとの分岐を過ぎ、あそこに見えているのにつかないハシゴ谷乗越を越え、剱沢へ急降下。たしかにハシゴだらけ、登りには使いたくない、と意見の一致を見る。
剱沢まで下り、ロッジまで登り。真砂沢ロッジの回転灯が見えるが、これまたなかなか着かない。雪渓がロッジのすぐ近くまで来ている、例年より多いよう。さて、小屋の営業は終了で小屋番さんがいるのみ。でも、ビールは売っていた、ラッキー!他にテントは無し(だと思う)。例によってビールで一杯やり、夕食は村上のスパゲティ。カタカナ名前はよくわからないが味はいつもながらおいしい。榊家秘伝の梅酒も登場、市販品と違い甘すぎずさっぱりしている。外は満天の星で明日も晴れそう。でも意外と冷え込みはない。
今日も朝から快晴で文句のつけようがない。テント場からアイゼン装着で少々緊張。さすがに雪渓はカチカチ。アイゼンを効かせながら登っていく。長治郎谷出合で榊はそのまま剱沢雪渓を登り剱沢小屋へ。
他のメンバーは長治郎谷を詰めて本峰登頂を目論む。いらない荷物をデポし、新雪の上を歩いていく。今までの黒ずんだ汚い雪渓から一転、真っ白な雪渓は気持ちがいい。雪も適度にしまって登りやすいはずなのだが、体がついてこない。和田が遅れ始め、すぐに小久保も遅れ始める、日頃のトレーニング不足か。時折、石が転がってくる。
結局時間切れなので本峰登頂はあきらめ、長治郎谷右股を登ることに。夏のような日差しで体が熱い、雪からの照り返しがまた強烈。2800mの最終到達点で振り向くと針ノ木岳が見える。うっすらと雪が見える。程なく休んでそろそろ雪渓を下降かと言うとき、小惑星帯突入(したことは実際ないが)のような落石が我々を襲う。意外にみんな冷静で上をじっと見つめるが、すんでの所で落石はすべて左右に分かれて散っていった。休憩場所の選定も重要、と村上リーダの声、ごもっともです。
スキーで滑られればこの上ないが、あいにく持っていないのでアイゼン効かせて下っていく。下りのほうが怖いのでヒヤヒヤ。雪も緩んできているのでなおさら。それでも傾斜がゆるんでくると面白くなってくる。和田曰く、山で一番楽しいのは雪渓下るときだね〜、と。そうなんですか。。。
デポ地点まで下り、後は剱沢を500m登るだけでお楽しみの夕食。とはいうものの、荷物が重い、空気が薄いと、足がなかなかあがらない。でも村上・藤澤はなぜかペースが速い。たぶん人間ではないのだろう。和田は高山病、小久保は不慣れなアイゼン歩行が原因としておく。先行した榊とテント場で合流。榊は天気が良すぎて昼寝タイムがあったらしい。
剣沢のテント場は20〜30cmの積雪。小屋はやっておらず、他のテントもいない、まったく静か。水を作りつつ、剱岳が赤く染まっていく姿を見るのは、この上ない。夕食前に村上のアスパラや藤澤のキュウリ・エシャロット、榊の浅漬けなど豊富なつまみで一杯やる。和田は高山病か、横になる。夕食は村上シェフのカレー。名前のわからない野菜や怪しい香辛料を入れたりと本格的。メンバーの昔の話を聞くと面白い。レルヒ少佐からスキーを習った話(誰の昔話??)や、柄の長いピッケルの話など、和田の装備は大町の博物館に展示してあるとかないとか。。。夜は風が強くなったが空は満天の星で明日も晴れを確信。
最終三日目もすばらしい天気。ズバリ小久保のおかげでしょう。朝食は和田の麻婆春雨。何でも作り方に熟練の技が必要だとか。秒単位のシビアな進行にただ驚くばかり。
まずは別山乗越まで。体が暖まるまでなかなか進まない。実際は暖まっても進まないが。。。剱御前小屋はやってはいたが、人の気配がない。室堂を一望。去年の11月ここを滑ったのを思い出す。雪はあるが滑るにはまだ早い。
ここからは、本格的(小久保にとって)な雪の尾根コース。途中きわどいトラバースがあり、アイゼンをよく効かせながら通過。他の人はたいしたことではない様子。違う方から回ると簡単だったりもする。ルートファインディングの練習にもなる。
雄山までくると他の登山者が現れる。下界が近づいたという気分。雲海が広がりその上に山々が頭を出している。周りの山はもちろん南アルプス、富士山まで眺められる。来た甲斐があったというもの。雄山からの下山は雪が切れてきており、アイゼンの歯をかばいながら雪を拾っておりる。途中でそれもだめになり、アイゼンをはずして一の越へ下る。
一の越では皆でおしるこを食べる、疲れた体には甘い物がいい。初夏のような日差しで昼寝といきたいところだが、タンボ平まで下らなくては。重い腰を持ち上げ、行動開始。アイゼン無しだから体が若干軽い。まだ雪が残っておりトラバースには少々気を遣う。和田プロに歩き方を教えてもらう。トラバースでも大胆に力強く踏み込みスピーディーに歩く、そうは言っても難しい。
トラバース中に和田が滑落。谷足が雪を踏み抜いたらしい。樹木で止まり一安心。もう少しずれていたら御前谷の底へ真っ逆様。ストックだとなかなか止まらなかった、ピッケルだと華麗な滑落停止を披露できたのだが、とのお言葉。新雪が薄いのでたまにズボッと下を踏み抜き歩きづらい。東一の越からは紅葉に染まるタンボ平が見える。遙か遠くに黒部平の駅も見える、意外と遠い。ここからは日陰になるので念のためアイゼン装着。ここからも踏み抜きばかりで歩きづらい。雪が消えてきたところでアイゼンをはずす。紅葉を見ながら、途中からは樹林帯に入り紅葉を下から見上げながら歩くも、なかなか駅は近づかない。途中、疲れを倍増させるハシゴがあったり、笹藪があったりと歩みは落ちる一方。アルペン最終は何時か気になりだしたところで、黒部平駅への分岐、もう一息。最後の力を振り絞って駅への登り返しを登ると、人混みの黒部平に到着。世間は観光シーズンだった。満員のケーブル・トロリーバスと乗り継ぎ扇沢へ。例によって大町温泉の薬師の湯で汗を流し、隣の食堂で夕食だが、5人はオーバーユースか。。。みんな顔が日焼けで赤かった。
紅葉から雪稜までと内容豊富な3日間だった、山スキーの下見もできたし、休憩場所のポイントや雪稜歩きの方法、また私はアイゼン履いての長時間行動が初めてだったので良い経験になった。
一の越にて 撮影:近くにいた小屋番?さん 機材:榊