妙高前山の雪崩に続き、1週間前の硫黄岳では私の出身大学の学生が雪崩に巻き込まれ、安達太良山でも道迷いの遭難と、よくないニュースが相次ぐ。
横浜から来た野村車に池袋駅で全員が乗り込み出発する(6:10)。首都高から東北道に入り、二本松ICから岳温泉を経てあだたら高原スキー場の駐車場に到着する(9:50)。雪はしばらく降っていないようで、道路の雪はスキー場少し手前から現われただけだった。
時折強く吹く風で身支度するのも大変。先が思いやられる。薄っすらと雲がかかっていて風は強いが日差しはある。シールを装着し、猪俣、室橋、野村、藤澤、上林の順で緩やかなゲレンデ脇を上って行く。リフト1本分上って右にやや下り、烏川に架かる雪でほとんど覆われた橋を渡る。車が1台通れるぐらいの林道を上っていく。樹林帯に入り暑くなったので、着ているものを脱ぐ人も。
やがて道は狭くなり斜度を増す。何人かのスノーシューの登山者とすれ違う。勢至平手前のやや広い所で一休み。辺りにもたくさんの登山者がいる。少し上るとほぼ平坦になり、木もほとんどなくなる。勢至平だ。さっきまで明るかった空も白くなってきた。時折強くなる横風をやり過ごしながら進み、斜面を左にトラバースして行くと、くろがね小屋が見えてくる。小屋に入ると休憩している登山者でいっぱいだ(13:00)。空いているところを見つけ、上林さんが宿泊手続きをしている間に各自昼食をとる。
本日の目的地はここまでであるが、まだ時間もあるので上れる所まで行くことにしてそのままの荷物で山頂を目指す(13:30)。小屋から少し戻りぎみに谷筋に入って、そこを上る。トレースはないが雪は堅いので板はほとんど沈まない。徐々に斜度が増すのでシール面をフラットにして摩擦力を最大にすることを心掛けて上る。空はほとんど白いが、薄っすらと日が当たっている。沢を真っすぐつめすぎ、矢筈森の急斜面を少し上り過ぎたことに気づく。板を履いたまま下るのは危険と判断し、板をザックにくくりつけ少しトラバースぎみに下る。峰の辻の先の風の弱い所まで行き休憩するが、時間もあまりないので今日はここまでとなった(15:00)。
シールを外して峰の辻まで板をかつぎ上げ、上って来たのと逆の順で滑り出す(15:20)。基本的に硬い雪だが、所々雪質が変わるので注意しながら滑る。10分程でくろがね小屋のすぐ上まで滑り降りる。
適当な場所を見つけ上林さん指導の下、穴を掘り、ハンドテストとショベルテストを行う。表面1cmぐらいにすぐ動く弱層が、40cmと60cmぐらいに、かなり力を入れないと動かない弱層が確認された。
次は小屋の前に移動してビーコン練習。私は昨年秋の練習会の後にビーコンを購入したので、自分のビーコンで捜索練習を行うのは初めてであった。隠したビーコンをみなほぼ問題なく探すが、小屋の中でビーコンの電源を入れている人がいるらしく、そちらに反応する時もあった。
練習を終え小屋に入る(16:10)。部屋は10号室。5人にはちょうどよい広さだ。白濁の温泉で暖まった後、猪俣さんが準備してくれたつまみで夕食前に一杯やる。つまみは、水餃子、エリンギと肉の炒め物、スナップエンドウの塩茹、ナチュラルチーズのカナッペ、などなど、とても豪華。担ぎ上げた猪俣さんに感謝。酒は、ビール、ワイン、濁り酒、焼酎、バーボンなど。
やがて、小屋の夕食の時間となる。よく煮込こまれたカレーライス(お代わり自由)はうまかったが、夕食前に結構腹に入れているので、私は1杯だけとした。部屋に戻り消灯の9時前まで色々な話に花が咲く。
早く寝たので、夜中に何度か目が覚めた。5:30頃風呂に行ったらまだ明かりが点いていなくて、暗い中で湯に浸かる。明るくなってきたので、外に出てみると青い空に月がきれいだ。小屋の管理人によると、こんなに晴れたのはめったにないそうである。6:30頃から自炊の朝食。チャーシュー、メンマ、長ネギ、餅のたっぷり入ったラーメンでエネルギーを補給。コーヒーなどをゆっくり飲んでから支度をする。
シールを付けて昨日と同じ沢筋を上りだす(8:00)。2度目なので特に問題なく進む。峰の辻で小休止(8:40)。昨日はよく見えなかった安達太良山が乳首のごとく天に突き出している。シールのまま少し滑り降りまた上り返す。しばらく上ると前方に岩場が広がる。板を履いたまま岩の合間の雪が付いている所を選んで上る。岩場も終わり雪はさらに堅くなり斜度もきつくなったので、上林さんの指示のもとクトーを着ける。直登する猪俣さんの後に続いたら、板を滑らせ膝を突き転倒一歩手前。この辺がベテラン会員とゲストの差か。直ぐに上林さんが駆けつけてくれ、下でフォローしてくれたので力を借りて立つことができた。
以後はクトーを十分効かせ階段登行ぎみに斜めに上る。後ろに目をやると白く雪をかぶった蔵王の山々がきれいだ。急斜面を乗り切り、さらにしばらく上ると山頂直下の平らな所に到着(9:40)。
板とザックを脱いで小休止後、山頂の道標前で集合写真。その後、つぼ足ですぐ上の本当の山頂に向かう。雪はそんなに堅くもなく、軽いキックステップで上ることができた。山頂は360°の大パノラマ。猪俣さんの説明で山座同定。那須連峰、磐梯山、飯豊山、吾妻連峰、何も言うことはない。この山の上の青い空がまさに「ほんとうの空」なのだ。
おだやかと言っても安達太良山、そこそこ風は強い。これ以上いると鼻水が出切ってしまいそうなので、早々にザックまで戻る。シールを外していよいよ滑走だ(10:20)。地元の登山者のアドバイスも参考に五葉松平方面に下る。1分も滑らないうちに岩場出現。板を手に持って少し下り、再度板を履いて滑り出す。
沢沿いをしばらく滑り、五葉松平付近で右よりに進むが、名前の通り五葉松が生い茂り、半ば薮こぎ状態だ。気温も上がってきて手袋の中が汗ばむ。左側に戻ると、なかなか良さそうな斜面が出現。つかの間の至福を味わい、やがてゲレンデに合流する(11:10)。ゲレンデ脇で最後の休憩、2日間を色々とふり返る。なごりを惜しむようにゲレンデを滑り降り無事山行終了となる(11:35)。ゲレンデ最下部でメンバーそれぞれと堅い握手を交わす。
岳温泉の岳の湯で汗を流し、本宮付近の蕎麦屋菊水で昼食を食べ、本宮ICから東北道に乗った。明るいうちに池袋駅に着いて解散となる(17:10)。
妙高前山の雪崩事故の後だけに、本山行実施が危ぶまれたが、上林リーダーの山行を続けながら安全な山スキー技術を向上するのが前向な対応という考えに賛同して参加した。風が強いことで知られている安達太良山であるが、くろがね小屋の管理人もめったにないと言うほどの好天と、何よりもメンバーに恵まれ、安全な山スキーを楽しむことができた。
シール登行時の板の踏み方やクトーの効かせ方を多少なりとも習得できたような気がする。また、弱層テストにおいてはスノーソーがかなり威力を発揮することも実感できた。
初めての小屋泊まりの山スキーということもあって、荷物を軽くするために小さめのザックにしたが、上林さんや猪俣さんに荷物の負担をかけてしまったようだ。今度からは大きめのザックでもう少し荷物を担ぐようにしたいと思う。
※くろがね小屋(090-8780-0302)、定員42名、宿泊料¥3,160、夕食¥1,260、朝食¥640、入湯税¥150(くろがね温泉)、暖房料¥260(宿泊時11〜4月)、休憩料¥360(日帰入浴料)、暖房料¥160(休憩時11〜4月)、
http://www5.ocn.ne.jp/~fukannko/kurogane.htm
※岳温泉岳の湯、定休なし10:00-20:30、¥300石鹸ありシャンプーなし、素泊まり¥3,350(源泉はくろがね小屋)、温泉街唯一の信号のある交差点前にあり、駐車場はやや離れている
http://www.joy.hi-ho.ne.jp/ma0011/T-Fukushima01.htm
※そば菊水、R4の二本松と本宮間、年中無休11:00-20:30、丼物¥580、丼とそば又はうどんのセット¥780、広い駐車場あり、http://www.townpita.com/clients/1103024488/detail
(藤澤 記)