大井町線の上野毛駅前で安部さんの車に拾っていただき御殿場に向かうが、東名高速に入ったとたん帰省の大渋滞にはまり、長坂さん宅まで3時間もかかってしまった。大月経由で丹波山村に入り、おいらん淵に車を停めて出発の準備。気温は低めで一ノ瀬川遡行向きではない。一ノ瀬川橋横の踏み後を下り、一ノ瀬川に入渓。
小さな徒渉を繰り返しながら濡れを最小限にするように進む。しばらくして最初の泳ぎ。ロープを引いて平泳ぎでクリアし、ロープを固定する。安部さんと長坂さんが続くが安部さんは大分苦労した様子。しばらく進むと核心部に到着し 第一ゴルジュ。実は2週間前に別パーティーで一ノ瀬川に入ったが、核心部の3つのゴルジュを全て抜けられず高巻いたため、今回はゴルジュ突破のためにライフジャケットとスイミングゴーグルを持参した。
空身になりライフジャケットを着てゴーグルを着け、ロープを結ぶ。一度失敗すると体が冷えて どんどん厳しくなるのが判っているため、一発勝負と気合を入れる。右岸をへつり、左岸に泳いで渡って一休みして右岸に飛び込んできつい流れに逆らってクロールで泳ぐ。ゴーグルを着けたのが大正解で水中の壁にホールドを見つけて、壁沿いに泳いで突破。落ち口は真っ白い泡が沸き立ち一見恐ろしげだが、足が底についたため割と簡単に上がれた。一発で突破したので気分は最高。
ロープを固定し合図を出すが、安部さんは足がつってしまったとの事で右岸にぶら下った残置シュリンゲを使って巻く。長坂さんが到着した所でいきなり雷雨。もう少し進んで様子を見る事にしたが、増水するとやっかいなので第二ゴルジュの手前で遡行をあきらめて、一ノ瀬川林道まで50-60m 登って逃げる事にする。ぐずぐずの泥壁にてこずったが何とか林道まで上がり、おいらん淵まで戻ってフィニッシュ。
丹波山村の集落で食料を買い出す頃には雨も小ぶりになり、「のめこい湯」で入浴。「のめこい」とは丹波山村の言葉で「つるつる」とか「すべすべ」を表す誉め言葉だそうで、本当に肌がつるつるになる良いお湯でした。
一ノ瀬川林道沿いの空きスペースに移動してテントを張ってすぐ夕食。男三人なので酒と適当なつまみがあれば十分なので気楽。最後に作ったインスタントのマーボー豆腐にご飯を混ぜて煮込んだ、マーボー豆腐おじやが絶品だった。
4時半起床で朝食を取り、テントをたたんで出発。前日に確認しておいた下降点から一ノ瀬川まで下る。尾根状の良く踏まれた踏み跡をたどって簡単に川まで下れた。ここから大常木谷の出会いまで一ノ瀬川を下降する。大常木谷の出会いが見えた所で、上林が転倒して右膝の内側を岩に打ちつけて しばし痛みで動けなかったが続行。
大常木谷に入ると水量も減って快適に進む。天気が良いため沢がキラキラ輝いて素晴らしい。まずは五間の滝(8m)で、ホールド・スタンスが豊富な水流の左をロープを着けて登り、途中でハーケンを打ってランニングビレイ。すぐ上にしっかりした残置のハーケンを見つけたので、ビレイを付け替えるために自分で打ったハーケンを抜いたら手前の岩が簡単にボロっと崩れた。危ない危ない。滝の落ち口はホールドが無く一見いやらしいが、フリクションが効くので問題なく抜けた。安部さんと長坂さんを確保して登ってきてもらい まずは一安心。
しばらく行くと迫力の有る千苦の滝(25m)。ここは登れず、左岸を巻く。滝口に向かう踏み跡が有り、いやらしいトラバース箇所にはロープも張って有り問題無し。しばらく進むとちょっとしたゴルジュ帯で楽しみながら進む。
モミジ沢の手前の釜を持った滝は2週間前に釜から滝に上がれなかったので再度挑戦。ホールドが逆層気味で釜の中のスタンスが乏しく、上からの水流もきつくて苦戦したが、水流の中の左にスタンスを見つけて何とか釜から這い上がって登れた。簡単に巻ける所だが随所で遊びながら登るのが実に楽しい。
長坂さんと阿部さん
不動の滝(13m)は良く見ると、水流の左を登れそうな気がしたがここは無理をせず、右岸を巻いて滝口の上で懸垂下降。このあたりからナメが続いて素晴らしい渓相。カンバ谷との分岐を過ぎて しばらくゴーロを歩かされて会所小屋跡に到着。たっぷり遊んで予定より少し時間がかかってしまった。
大常木谷の核心部は過ぎたが まだ標高差650mを登らなければならない。ここからはあまり遊ばず、どんどん登る事にする。大きな滝は無く、何箇所か美しいナメを超えながら歩くが、前半でたっぷり水に浸かった疲れが出始めてペースダウン。標高1600m付近の二股から人が通った気配が無くなり、標高1700mあたりで水が切れて、笹薮に突入。軽い藪漕ぎとなるが、尾根状の所で踏み跡を見つけてたどると主脈縦走路の登山道に出た。3人ともかなり疲労ぎみ。
会所小屋の上部は綺麗なナメが続く
ここで待っていたかのように突然雨が降り始めるが、ここまで来たらどうにでもなれという感じ。ここから3時間の長い下りなので靴を履き替えて一之瀬方面へ歩き出す。途中の将監小屋は草原の中の一軒屋という感じの素晴らしい場所にあった。なかなか標高が下がらない登山道をだらだら歩いて一之瀬川林道に出て、出発地点に到着した。
久々の11時間行動となり疲労困憊したが、好天の中 大常木谷を完全遡行できて充実した素晴らしい山行でした。
(上林 記)