2006年正月 槍ヶ岳飛騨沢 個人山行報告

12月30日(金) 天気:曇り

阿弥陀岳北稜へ向う妻を近くの駅へ送り、鈴木さんと7時に待ち合わせ御殿場へと向う。 暮れの割には、東名高速道は空いており、9時待ち合わせが30分も早く長坂さん宅へ到着。中央高速道も空いており、途中で昼食を摂って新穂高温泉へ1時過ぎに到着。早々に仕度を整えて出発、できれば滝谷避難小屋までと考えて進むがやはり雪が多い。4時過ぎになり当初予定の白出沢出合でテント設営。3人ともシーズン初の山行であり、仙台の友人から戴いた自家製の薫製岩魚とスモーク・チーズをつまみに、安全を祈念して越乃寒梅で乾杯。

12月31日(土) 雪

昨日夕方から雪が降り出してはいたが、今朝も降っており、登山者のトレースが少々埋まっている。鈴木さんのトップで進む。途中で阿部に代わるが、登山者のトレースは壷足のでありルート工作に手間取る。夏の形相とはまるで違う滝谷のドームを見上げて休憩。
雪の重みで潰れるのではと思う程の雪を載せた槍平小屋へ、12時過ぎに到着。早々に小屋に入るが、デポグループの荷物と、先客1名で8割程の入りで有った。牢名主のように、当然の如く一番奥の中央に長坂さんが荷物を置く。小屋の周りにはテントが6張。
 我々は時間を持て余してまどろんでいるのだが、先客が何かぶつぶつ言いながら、小屋を出たり入ったり。3時過ぎ、先客が小屋に着いた下山者と何やら話し込んでいる。しばらくして状況が分かって来たが、この先客登山者は昨30日、槍ヶ岳登山中に雪と大変な風とで、ツェルトでビバークをしたが、その際に目が凍傷で見えなくなっているスキーヤーをお湯で温めてあげ、ツェルトに入れてあげて一晩を過ごしたとの事。本朝、スキーヤーの回復を見届け先に降りたが、スキーのわりには到着が遅く心配で小屋で待っていた様子。携帯電話で警察へ連絡を取り、スキーヤーは骨折で、現在ヘリでの救出を準備中である事が分かる。
鈴木さんと顔を見合わせ、安全第一とつぶやく。先客の青年は安心できたので新穂高温泉へ下山しますと、出発したのが4時過ぎ。いくらトレースがあるにしてもヘッテン行動・・・・それにしても奇特な青年である。どちらも、大事が無いよう祈りたい。

1月1日(日) 快晴

週間予報に反して、快晴の様子。はやる気持ちを抑え、寿の文字入りこうや豆腐で新年を祝う。槍平にいるのは殆どが登山者で、冬山登山では無く冬季登攀のスタイルである。スキーヤーは我々のグループだけであった。 登山者のトレースを大喰岳西尾根手前まで使用したが、その後は長坂さんが雪質は安定していると判断し、クトーを付け飛騨沢をダイレクトに詰める。中崎尾根に数グループ、大喰岳西尾根を数グループが岩に取り付いている。 昨日、降りた登山者のトレースを発見し、急登手前まで使わせてもらう。槍が岳の肩の小屋もはっきり確認でき、もう一息の高度迄来た。双六方面も一望に見渡せ、しばし5月のオートルート山行を話す。5月に槍からトラバースして飛騨沢へドロップインした地点の大岩を目掛けて、鈴木さんがハイペースで飛ばす。2,810m地点到着。長坂さんから稜線まで出るか問われるが、大岩の上が滑れない事を学習しており、早々にシールを剥がし滑降準備に入る。

飛騨沢を覗き込むが、5月の時より傾斜を感じる。飛騨沢左半分が、まだ日があたっておらず、思ったより短時間で登り詰めたようである。安全第一を誓い、鈴木さんをトップにドロップイン。 深雪を探すが前日の強風で上部は硬めの雪質である。イメージしていたフカフカパウダーはなかなか無い。200m程下降したあたりから、少し重いが念願のパウダー。場所々で雪質が刻々と変わり、滑りが非常に難しい。5月のように2,800m地点からの、いっき下降は不可能であった。 見上げると、飛騨沢には3人だけのトレースだけであり、またまた貸し切り状況であった。 雲一つ無い快晴の中で休憩を取りつつ、のんびりと槍平小屋へ向う。快晴無風で厳冬期と思えない。小屋前にて充実感に満ちた祝福の時を過ごす。

1月2日(月) 雪

夜半は満天の星空であったが、昨日とうって変わってしんしんと粉雪が降る朝である。 小屋宿泊者は全員下山の様子。鈴木さんと阿部は早々とスキーにシールを付けて準備していると‘’シールは要らないよ‘’との長坂さんの指示。登って来たのに帰りに登る必要ないでしょとの説明。ごもっとも。
帰りの登山者が登りのトレースを歩き出すのを尻目に、いざ沢筋へ滑降。朝方に積もったのか、30cmくらい板が沈む。滝谷手前からは沢水も確認できるため、登山道へそれる。それでも、やはりスキーは早い。
白出沢まではスキーを担ぐ事が多く、苦労しながら到着。ここから先は、下りだけ。登山者のトレースをボブスレーのようにいざ!! そこのけそこのけスキーヤーが通る。 新穂高温泉の無料浴場で一汗流し、帰路へ付く。

コースタイム:
30日 横浜07:00==御殿場08:30==13:00新穂高温泉13:20……白出沢16:20
31日 白出沢07:20……槍平小屋12:20
1日 槍平小屋06:30……飛騨沢2,810m地点10:45−−−槍平小屋12:20
2日 槍平小屋07:00……白出沢……新穂高温泉10:30

(阿部 記録)