西吾妻・若女平コースの個人山行報告
日程:2005年1月15日(土)
メンバー 宮本(L)、上林、深井、猪俣
行程:
天元台リフト終点9:20→中大巓と梵天岩の鞍部10:20→西吾妻小屋到着11:45(出発12:30)
→竜崎沢入口13:00(標高1900m)→若女平の尾根15:00(標高1540m)
→痩せ尾根通過16:30(標高1250m)→白布温泉17:50(西屋旅館到着)
米沢スキー場で仮眠した後、天元台に向かう。いよいよ決戦の日がやってきた。2年前の悪夢を振り払うべく最新の装備と、そして最強の先達の方々とやってきたのだ。今度こそは!あくまで2月の会山行の下見なので、宮本がリーダーになったつもりで先頭を行くように設定した。ほとんど誰もいない天元台スキー場のリフトを乗り継ぎ、リフト終点に到着。膝下くらいのラッセルから始まった。ラッセルを先頭でしたことがない宮本はいきなり難渋。先行者のトレースを使うも、踏ん張りが足りずズルズル後退することもしばしばあった。上林さんにラッセルの手本を示していただく。さすがに早いし、何よりも力強い。その後4人交代でラッセルして、中大巓と梵天岩の鞍部に到着。目の前に梵天岩の稜線がくっきり見えた。時折薄日が差して視界は良好。稜線でも風は弱く、絶好の下見日和であった。(その後も終日安定した天候が続いた。)鞍部からは雪は深くても踝くらいで快適な歩行、登高が続いた。梵天岩と天狗岩の社もはっきり確認ができた。梵天岩と天狗岩の間をコンパスで慎重に方向を定めて、西吾妻小屋に到着。2年前は近くまで行きながら発見できなかったので、今回屋根が見えた時は心が躍った。 雪は少なく吹き溜まりの雪をスコップで除雪し1階から小屋に入った。2階のドアが凍っていたためか?開かなかったことが唯一気になる点である。休憩後いよいよ滑走に入る。若女平に向かう主尾根の西側の沢(竜崎沢)を滑ることにした。尾根と違ってツアーコースの標識はない。快適な滑走を期待していたが、まだ積雪量が少なく、凹凸がかなり激しい。10メートルも滑れれば御の字であった。ここでも先頭の宮本は雪まみれになりながら沢をひたすら下っていった。こんなことをしていると日が暮れてしまうので、再び上林さんに先頭になっていただいた。(その後、本当に日が暮れてしまった。) 1570mまで下ると沢が完全に開いている。水音も聞こえてきた。一度尾根に迂回し、ここをかわしたが、このまま沢筋を下ることに危険を感じたため、シールを着けて若女平の尾根に登った。再びシールをはずし滑走にはいる。宮本が滑りやすい斜面を選んで下っていくと、またしても元の沢に引き込まれていった。高度計の表示と、植生がオオシラビソからダケカンバに変わり、鬱蒼とした感じから空が開いてきたため、若女平に入ったことが明瞭になる。ただし本来であれば、東側(右側)に深い小和須知沢が見えなければならないのに、ずっと西側(左側)に沢筋が見えている。東側にコースを取り直さないといけない。そうでないと若女平からの唯一の下山ルートである痩せ尾根に行けなくなってしまう。拙い上り返しで宮本は少ない体力を大消費してしまった。またしても上林さんに装備を持っていただく。(その後、宿で上林さんに荷物をチェックしていただき、2キロは減らすことができると判明。)
そうこうしているうちに時計の針も刻々と進み、何と16時。予定ではもう下山している時間である。まだ標高差は半分残っているというのに!今日の旅館は2年前からの定宿であるため、このままだと再び遭難騒ぎになってしまう。まずい!それだけは避けなければならない!カーッと頭に血が上ってくる。しかし次の瞬間青ざめる。どうしたらいいんだ?完全に狼狽してしまった。もう真っ直ぐ痩せ尾根に進むしかないだろう、と。そこで猪俣さんが一度尾根を完全に登り、宿に連絡を入れることを最優先にしようとすかさず提案。これが功を奏して、尾根に上がると携帯電話が通じるようになった。宮本が直接電話すると動揺が伝わってしまうため、深井さんに代わって宿に連絡していただく。案の定、宿でもかなり心配しているようだ。なおも宮本が真っ青な顔をしていると、深井さんに「しゃぶしゃぶと温泉が待っていますよ。」と元気付けていただいた。最低でも暗くならないうちに、核心部である痩せ尾根を通過しなくてはならない。宮本が完全にGPS任せで真っ直ぐ痩せ尾根に行こうとすると、再び今度は深井さんが東側(右側)に沢がみえるところまで行って、その沢沿いの尾根を下ったほうが確実と提案された。これは大正解で、楽に痩せ尾根に向かうことができた。恐れていた痩せ尾根は思っていた以上に幅があり、結果的に楽に通過することができた。最狭部分で宮本の、足元の雪庇が落ちてヒヤリとする。止まっている時の方が注意が必要だ。雪庇の間から、ゾっとするような深い谷が見えた。本当に暗くなってきたので全員ヘッドランプを付ける。これがランドネ伝統の夜間行軍というものなのか。初めての経験で心臓の鼓動は相当に早くなった。 上林さん、猪俣さんの懐電は2週続けてだそうだ。
西吾妻から若女平滑降ルート図
その後夏道沿いに徐々に高度を下げていく。ブッシュが出ていたり、穴が開いていたりするので、慎重に下っていった。真っ暗な樹林帯をしばらく降りると、白布温泉の灯りが見えてきた。ああ、これでもう大丈夫だ・・・。ここで安心したのか宮本は、コースアウトしたりビンディングトラブルがあったりで、最後まで足を引っ張ってしまった。今日の宿泊地、西屋旅館に到着。「本当に心配しましたよ」という宿の方の第一声が印象的であった。再びお騒がせいたしまして誠に申し訳ございませんでした。それから私たちを待っていたのは、温泉とビールと食べきれないほどの米沢牛のしゃぶしゃぶであった。最高に至福の夜をすごすことができた。 翌16日は荒天のため山行を中止して帰京した。
下見後の印象・コースの概要:
・ほとんどが樹林帯であるので大滑走は楽しめないが、所々の深雪滑走とルートファインディングを楽しむコースである。しかしエスケープルートは皆無である。
攻略ポイント:
・西吾妻小屋を確実に探すこと。
・若女平に向かう西側の沢を下る。滑走に不安を感じたら若女平の尾根に早めに上り返して、尾根を下る。
・1500m付近で尾根に乗ってからは、右の沢を見ながら稜線を進む。ただし1330mの分岐は注意。
・若女平コースの植生は上部(沢筋)オオシラビソを主とする針葉樹林。鬱蒼としている。若女平に入るとダケカンバの広葉樹林帯。空が開けてくる。痩せ尾根通過後は杉林となる植生と高度計でも現在地の参考になる。
・痩せ尾根は板を脱がないで通過する。東側の雪庇に注意。そして明るいうちに通過。
その他:
・宿泊地は白布温泉が最適である。温泉と美味しい料理・酒が揃っている。
・米沢スキー場の無料仮眠所は暖房完備で役立った。
以上