感想編: 「初心者が日本オートルートを完走するには?」
今回初心者ながら参加を承諾していただき、長坂リーダーと鈴木さんを初めとする皆様のご協力のお蔭で無事に完走することができました。それでは具体的に何が成功に導いたのか?殆ど長坂リーダーのアドバイス(事前の石黒さんの助言も含む)の受売りですが、自分なりに整理してみました。
1. 全般
当然のことながら初心者は、リーダーの意見に従ってください。この場合「従う」というのはリーダーから言われるままにするということではなく、不明点、疑問点を自主的に聴いて解決するということです。
リーダーだけではなく、経験者にもどんどんききましょう。装備もそうですが、事前にルートとその危険な場所を聞いておくと心構えが違ってくると思います。私が今回最も感銘を受けたのは、長坂リーダーの「初心者は休憩の時、リーダーが何をやっているか(次の準備など)を見ておくべきだ。食事とか写真を撮るとかは、二の次だ。」という当たり前の言葉でした。休憩と言うと自由時間と勘違いしてふらふらしていましたので、よい教訓になりました。
それから同じく「休憩のとき(視界がいい時ならなおさら)、この先どうやって進むか、予めルートを考えておくこと進み出してからでは遅い。」という言葉です。
2. ルート編
楽しい滑走と絶対に転んではいけない箇所をあげてみました。
(1) 最高に楽しいコース。 (2) 転んだら大変なことに!
@ 槍ヶ岳飛騨沢 @ 越中沢岳の尾根の下り、トラバース
A 黒部五郎岳のカール〜黒部五郎小屋 A 樅沢岳山頂からのナイフリッジ下降
B 薬師岳から薬師峠 B 槍ヶ岳飛騨沢上部の雪渓歩き
C 北ノ俣岳から黒部五郎岳へのトラバース C 槍ヶ岳西鎌尾根全般
D 獅子岳南斜面からザラ峠付近への滑走 D 鳶山の登高及び下降
E 薬師岳頂上直下の尾根滑走
飛騨沢の大滑走。 飛騨乗越(標高3020m)からダウンヒル。 樅沢岳のナイフリッジ下降。実際は、切れ落ちて斜度があり怖い。
3. 健康面
@靴擦れ対策:予め靴擦れができそうな場所に、防止パット(登山店で販売)やスポンジ(お勝手用薄く切る)を当てて、テーピングを巻くと効果があります。靴擦れが実際できてからでは、効果は半減します。なお、私の場合この山行では、普段できない場所が靴擦れになってしまいました。場所は踝と両足の小指の外側です。長時間の山行に慣れていない初心者は十分ご注意ください。
Aバテ防止:今回長坂リーダーと、先頭を務めることが多かった鈴木さんのペース配分のお蔭でバテることはありませんでした。休憩の度、こまめに食事と水分補給していました。ハイドレーション・システムといってザックにチューブをくくり付けて、ポケットには飴とチョコレートを入れて、歩行しながらいつでも食べられる用意はしておきました。それからアミノバイタル(プロ)を12袋使いました。アミノバイタルは有効と思います。朝食と夕食の時飲んでおくといいです。
3. 道具対策
当たり前のことですが、装備の調整は重要です。特に初めて使用するものや普段めったに使わないもの(私の場合は歩行アイゼン)は、事前に確認が必要です。それから徹底的な軽量化をしてください。私は兼用靴で終始通しました。街中では恥ずかしい思いをしましたが、これでよかったと思っています。
@装備全般:何が不要か、必要かわからない場合、不安を感じた場合は、リーダーに装備表を作成して確認するとよいと思います。私も今回長坂リーダーに確認しました。意外と個人装備で不要なものは多いものです。
Aスキー:担ぐことも多いので軽量のスキーの方が楽です。
ビンディングは特別調整をする必要はないですが、外れやすいと危険性があります。
Bシール:1日に何回も着脱を繰り返すと糊が弱わって使用困難になります。その場合、テーピング(固定式)、ダクトテープで巻くと有効です。なお、シールはテールを金具で止められるものがよいです。張り流しは条件的にかなり厳しいです。今回は一応モンベルの携帯用の糊(スプレー式)を持って行きましたが使用しませんでした。
Cビンディング、ストック、クトー、アイゼン:ストックはブラックダイヤモンドのピック付ストックを2本使用しました。事前山行の富士山の時、長坂リーダーから購入を強く勧められていたものです。これがなければ越中沢岳のトラバースで、廊下沢に滑落していたでしょう。ピックくらいでは役に立たないとの意見もありますが、あるとないでは全然違います。
アイゼンは、アルミの軽量のもの。アンチスノープレートをつけて10爪以上で。
ちなみに今回私が使用したものはカンプの12爪で両足あわせて500グラムでした。
また今回は全くありませんでしたが、以前のオートルートではビンディングのプラスティック部分が破損したということをお聞きしました。針金と工具は必携です。クトーは、着脱の時不用意に雪面に置かないようにしてください。流れてしまったら終わりです。
これは他の道具、ザックについても言えます。何でもないような雪面でも意外と危ないものです。私は何度か鈴木さんにご指摘を受けて流さずに助かりました。
5. 食事面
@営業小屋の食事:基本的にご飯と味噌汁はお代わり自由です。おかずもそれなりにあります。ただし、五色ヶ原山荘では旦那さんしかいなかったため、夕食はカレーライスのみでした(奥さんがいると食事内容はだいぶちがうみたいです)。持参したふりかけが有効でした。
A行動食:営業小屋でも販売していますが、私の見たところカロリーメイト、チョコレート、飴、スナック菓子などしかありませんでした。予め行動食は日数分あったほうがよいと思いました。少し多めに持参すると、精神的にゆとりができるかもしれません。
B飲料水:暑くなると予想以上に消費します。特に五色ヶ原〜太郎平小屋と太郎平小屋〜双六小屋は途中営業小屋がないため、2リットルくらいあった方がいいと思います。
6.その他
阿部さんは休日の犬の散歩で、20キロ以上のザックを背負ってトレーニングしていました。多分周囲の失笑もあったでしょう。普通に考えてもかなり不審です。宮本は、足におもりを付け、やはりおもり入りザックをつけて通勤しました。あんまり重すぎて「このままじゃ遅刻だ!」とすべて道端に捨てて(置いて)走って、間一髪間に合ったということもありました。いずれも何とかしてオートルートに行きたい!完走したい!との思いからでした。やる気の問題は意外と大きいかもしれません。(宮本)