2005年2月 西吾妻 会山行報告
日程:2005年2月19日(土)〜20日(日)
2月19日(土)
天気:曇り時々雪 北西の風7m マイナス10度(稜線)
天元台リフト終点9:20→西吾妻小屋10:30→若女平13:20→白布温泉 14:30
リフト終点から樹林帯を縫うように登り、約20分で早くも稜線に出た。強風が吹きつけてくる。我々はあまり歓迎されていないようだ。視界は乳白色で塗りつぶされていた。表面の雪は風で飛ばされており、硬く歩きやすいことが唯一の救いだ。エビフライのような樹氷がいっぱいであった。
天気がよければかなり壮観であろう。みんなちゃんと付いてきているかな、と振り返ると、あれれ?20mくらい離れて後ろにいるし、2番目の深井さんがリーダー的存在になっている。これが本来の姿だ。何の違和感もない。皆で地図やらコンパスやらGPSまで引っ張り出して検討しているようだ。宮本と同じGPSポイントを登録した小久保さんでさえ、「本当に大丈夫かなあ。こっちでいいのかなあ」と何度も首を傾げている。大丈夫だよ、信じてくれ、と言いたい気分だったが、皆でいなくなってしまうような気がしたので、そのままじっと待つ。皆こっちに来てくれた。ああ、よかった…。そのまま梵天岩を経由して西吾妻小屋に到着。まずは目出度し。2階から小屋に入って暫しの休憩。
小屋でシールをはずして滑走に入る。若女平に向かう主尾根西側の沢の源頭を発見し、少々下ったところで、弱層テストを行った。田中さんが颯爽とピットを掘る。かなり雪は締まっている。肘を曲げて思い切りたたくと表面から20センチくらいのところに一つ弱層があったが、まずは安全を確認できた。
沢は樋状で広いところでも10mない。時折たまごが転がっているかのように吹き溜まりができて、沢は凹凸している。1ヶ月前の下見の時に比べると快適だが、下るに従って相変わらず凹凸が激しい。転倒が相次ぐ。
そんな中で比較的スピードに乗って滑っていた田中さんが凹凸に足をとられて転倒。「あっ、これはまずい!大変だ…」。宮本の方を振り返った田中さんの顎付近の皮が垂れ下がっている。出血もちょっとひどい。慌てて駆け寄る。本人は何事いたって冷静だった。止血してバンドエイド(大)を張り、その上からテーピングで応急措置をする。どうやら大丈夫なようだ。その後田中さんは何事も無かったかのように行動していた。各自が気を引き締めて安全第一で臨んでも、山行中のけがは全員が十分あり得ることだ。万が一アクシデントに遭ったとしても、負傷した本人もリーダーもメンバーも、まずは慌てないで冷静になることが大事であると思った。
沢とさよならをして若女平にトラバースする。シール無しで快適なトラバースをしたつもりだったが、下見の時とは違って、今度は主尾根の東側の小和須知沢に入り込んでしまう。尾根は遥か上にある。この沢こそ2年前宮本が進退窮まったところなのだ。(一部の新聞報道では、若女平の西側の沢で赤滝黒滝のほぼ真上となっているが、違うと思う。)もう2度と入り込むことはあるまいと思っていたが、今日再び来てしまった。まるで沢からの囁きが聞こえてきそうだ。思わず耳を覆いたくなった。何とかしなくては。ここは斜度もあり、いつしか雪質も悪くなっている。短時間だが長く感じる緊張のトラバースが続いた。
その後シールを張り急登して尾根に戻った。今度は黄色のツアー標識が目に付く。これで大丈夫だ。標識は一定間隔にあってうるさいほどであった。標識に導かれるように痩せ尾根に向かう。1ヶ月前より東側に雪庇が発達していた。皆慎重にかつ速やかに通過した。その後1160のピークを左に見ながら杉の樹林帯を抜けた。藤右エ門沢に望む最後の急斜面は悪雪で、かつ広葉樹から落ちた雪が溜まって凹凸になっている。通過するのに結構苦労した。しかし、1ヶ月前暗闇の中ヘッドランプを点けて降りたことを思えば、どうということでもなかった。
今日は明るいうちに西屋旅館に到着。こんな早い時間に宮本が到着して、旅館の方はさぞかし安心してくれるだろうと、嬉々として下山報告したが、怪訝そうな表情に迎えられてしまった。「皆さん、全員で降りてこられたんですよね。」と。前科者はなかなか信用してもらえない。「ええ、もちろん全員で帰ってきましたよ。」とこわばった笑顔で返事をした。ちょっと複雑な気分だった。
下山後、田中さんと宮本は米沢市民病院へ向かった。田中さんの怪我は裂傷で、診察の結果やはり5,6針縫ったようだ。温泉も酒も駄目ということ。翌日も通院のため、山行の続行は控えることになった。非常に残念である。でも、絶対また来ようと誓った。
夕食はもちろん米沢牛のしゃぶしゃぶ。これが山行の最大の目標であった。皆で先を争うように平らげてしまった。米沢名物の冷汁も美味しい。ご馳走様でした。湯滝の温泉に浸かって非常に快適な夜を過ごすことができた。
2月20日(日)
天気:曇りのち雪 北西の風10m マイナス10度(稜線)
天元台リフト終点10:35→天狗岩12:00→若女平13:40→白布温泉14:40
昨日の夜、大沢下りに行くことを決定。通院する田中さんと旅館で別れ、いざ天元台へ!さあ、今日も行きますよ!と思いきや、何とリフト、まだ動いていないではないか。気温が高くなったためリフトのローラーが凍り、点検に時間がかかっている、開始予定時刻は10時30分ということ。1時間以上動けない。いっそのことゲレンデをシール登高することも提案されたが、皆で検討した結果、昨日と同じ若女平に行くことを決定した。ただし、昨日と全く同じように滑っても変化がないので、西吾妻小屋には寄らずに、主尾根を滑走することにした。
10時リフトが動き出した。リフト終点から20分で稜線に出た。逃げ出したいくらいのすさまじい風であった。視界も殆どない。まるで白魔の住処だ。時折申し訳程度に薄日が差したが、我々には何の恩恵もない。2つ玉低気圧来ているので仕方がない。
天狗岩でシールをはずした。岩場の蔭にかくれたが烈風が吹き付け、皆声も出ない。逃げ出すように樹林帯の尾根に向かって進んだ。オオシラビソの濃い樹林帯の中に入ると、まるで今までの風が嘘のように穏やかになった。風も殆ど当たらなくなったので、休憩できた。そのまましばらく下ると夏道の標識に出会った。ここから快適なツリーランになった。雪質も軽い粉雪で昨日よりもよい状態。予想以上に樹木の間隔も空いていて、凹凸もない。昨日の狭い沢よりもよっぽど快適であった。
若女平ルート図 点線:2月19日 実線:20日