神楽実技講習会報告

日程:平成16年2月14日〜15日(1泊2日)

参加者:合田(L)、土屋(SL)、錦織(SL)、石黒(SL)、細田、山本、田中、宮本(記録) 、ゲスト11名 計19名

2月14日
天気:快晴 風ほとんど無し 気温 0℃ 積雪280cm
行動内容:かぐら・みつまたスキー場から中尾根を滑走
和田小屋10:00→稼動リフト最上部11:30→非稼動リフト最上部12:00→稜線(標高1984m)13:00→(中尾根)→和田小屋15:00

前泊組、車組、新幹線組とにわかれて、新幹線組は民宿の送迎車で「げたや」へ、ここで準備を整え10時、和田小屋前に全員集合。明日は天気が大荒れになるということで、リーダーから今日のうちに神楽の稜線に出て中尾根を滑るとの指示があり、錦織・土屋・石黒各SLの紹介と、L・SLの方々今日はご指導よろしくお願いいたしますとお互い挨拶あり。出発前に錦織SLがビーコン装着指導。借用のもの、自前のものがあり、全員ビーコン装着完了。まず和田小屋前のリフトを上がり、準備運動としてゲレンデの非圧雪コースを1本滑り、現在稼動しているかぐら第3ロマンスリフト最上部でシール装着にかかる。多少時間を要したが、その後の安全で快適な登高のため、じっくり確実に貼る。ツアー経験のあるゲストを先頭に出発。樹林帯に入る前で再び全員集合。ここでリーダーの予定進路説明の後、土屋SLが先頭になり、現在は稼動していないかぐら第5ロマンスリフト最上部に向けて出発した。斜面が急になったところで、各SLがお手本でキックターンの練習を開始。キックターンは苦手な人が多く、尻餅をついて倒れる人、片足のトップが雪面に埋まってしまいうまく回れない人など、斜面は大渋滞。それでも、何回か繰り返すうちにコツがわかってきたようで、何とかできるようになった。私は、無理な直登をしようとしてや、ズルズル。同じトレールを石黒SLが簡単に登ってゆきました。直登できない私のためにキックターンがある。もっとスムースにできるように頑張ります。そうこうしているうちに30分ほどでリフト最上部に到着。簡単な昼食の後、神楽の稜線に向けて出発。ここからは、目標となる稜線がくっきり見え尾根を巻くようにして登高。先頭と最後尾との差が徐々に開き、最終的に200メートルくらいになったが、特に何の問題もなく稜線に到着。土屋SLの「順調すぎるくらいのペースだ」という一言。稜線からは苗場山も谷川連峰も見渡せた。思わず見入ってしまうほどすばらしい眺望で、これも山スキーの醍醐味の一つだ。リーダーを中心に全員で記念撮影。いよいよ今回の講習のハイライトである中尾根の滑走が始まった。その前にグループ分けを行った。全員を各SLの3つのグループに分けたが、ここでハプニング?発生。ゲストの女性2人が「えっ、合田グループはないんですが?」と合田Lと一緒がいいと希望。リーダーに満面の笑みが非常に印象に残った。土屋・錦織・石黒SLの各グループの順番にスタート。どのグループも滑り出しは順調である(私を除いて)。斜面を1段降りたところで、再び全員集合。錦織SLによる弱層テストを行った。ゲストの方は、弱層テストが初めての人が殆どだったが、全員が真剣に聴講。再び滑走にもどる。立木がまばらに生えている大斜面。雪はやわらかそうなので滑りやすそうに見えたが、実際はかなり堅い雪で、その逆もあった。全体的にクラストしている雪で、滑走にはかなり難渋。それでも各SLも所によっては足を取られるほどの難しい雪質、残りのメンバーははほとんど全員が雪に足をとられて転倒を繰り返していた。その中でゲストのテレマーカーが颯爽と滑る姿があった。まるで飛んでいるようで見事な滑走で、全員から感嘆の声があがった。もしかしたら今日の全員の中で1番うまいのでは!他に帽子もゴーグルもつけないで滑走しているゲストもいて、転んだら大変だろうなと思っていたら、全くといっていいほど転ばないで滑っていた。これもある意味すごい。そんな中でターンする度に転倒している方が若干名。本来のグループから離脱してリーダーがフォローに回った。私の八幡平の初日を再現しているようで、かなり辛いだろうな、と思ったが、私自身も目の前のことで精一杯、なるべく転ばないように徹して、非常に苦しい滑走であった。高度を下げ樹林帯に入ると雪質が変わり、徐々にふかふかになっていった。木が密集してきたので、ぶつからないように安全にコースをとり高度を更に下げる。ここでは転倒はあまり見受けられなかった。やはり雪質がよくなると、滑走も違ってくるようようである。最後に沢を越えて再び和田小屋の前に全員が集合。先頭と最後尾の差は時間にして15分くらいだが、全員が事故もケガもなく無事に戻ることができた。その後下山ルートの途中で、錦織SLによるビーコン練習。雪に隠されたビーコンをみんなで探すという簡単な練習であったが、楽しくかつ真剣に取り組むことができた。三々五々宿泊地の「げたや」に帰着。ニュースで春一番が吹いたことを知る。7時前に夕食。そのまま反省会を兼ねた懇親会に突入。外はいつしか大雨。今日2月14日はバレンタイン・デェイということもあって、リーダーからチョコレートケーキ、細田さんから手作りオレンジピースの差し入れもあり、ワインあり日本酒ありの盛りだくさん。反省会ではゲストの皆さんから次のような感想をきくことができた。
・ 今回の講習会ではじめて山スキーの道具を揃えた人もいた。費用約16万円也。今日はこの費用を少しでも元を取ろうとしてすべりましたが、取れなかった。
・ シール登高が難しく、登りだけで予想以上に体力を使ってしまった。
・ ゲレンデとは全然違って滑走が難しい。同じ山スキーでも4月5月の雪とは全く違って面食らった。
などなどありましたが、山スキーの醍醐味を知ることができ、これからも続けていきたいという人がほとんどで、満足していただけた様子。矢口代表から激励の電話あり。最後にリーダーが、全員ほとんど足並みが揃い、そして無事に帰ってくることができてよかった、と総括していただきました。懇親会はそれからも続き、石黒SLのGPS分科会が開催され、また細田さんのカナダヘリスキー体験談と話が広がり大盛況。懇親会の最後に明日の予定の説明。予定は朝の天気の様子を見て決める、ということで6時半に朝食、7時15分には宿を出発できるようにとリーダーから指示があった。外はいつの間にか大雨から大雪にかわり、大粒の雪が舞っていた。朝までかなり降り積もる様子。朝一番のパウダーに期待して、全員10時前には就寝。


中尾根の登り

2月15日
天気:強風を伴う雪 気温−5℃ 積雪300cm
行動内容:雪崩講習会及びゲレンデ滑走(以下各グループに分かれる)
1 みつまた雪崩講習会組11人&みつまたゲレンデ滑走組2人
2 神立高原ゲレンデ滑走組4人
3 下山組2人

宿泊地出発8:30雪崩講習会9:00〜11:00 帰京13:30

朝起きると外は雷。春雷でしょうか。風もかなり強い。予定通りに行動して出発に備えていたが、突然スキー場からの放送が室内に響き全員が聞き入る。強風のため、かぐらゴンドラが運行停止。ロープウェイの運行開始時間は7時半から8時に変更ということ。全員で、それでは田代で滑走練習を検討していると、またもや放送。田代は全面滑走不可。滑れるのは、みつまたのみ、ということ。再検討の結果、4つのグループに分かれ、参加者全員の講習会は解散ということになった。私は、みつまた雪崩講習会組に入った。以下はみつまた雪崩講習会の報告である。ロープウェイ、さらにみつまた高速リフトに乗る。リフトを降りるとかなりの強風。視界も悪くて確かにこの状態ならリフトもゴンドラも動かない。雪質は重い新雪を1本滑って講習会開始。講師は昨日に引続き錦織SLが務めていただく。最初にビーコン練習。予めビーコンを埋め、雪崩が起きてデフリの範囲を決めて、全員で手持ちのビーコンを使って探索。これだけの人数がいると、探すスピードはかなり早い。ビーコンを見ないで周りの人の様子でわかってしまうということもあったが。錦織SLによる十字法という絞込み方法の解説と実践は、さらにビーコンの操作を詳しく知ることができた。次にビーコンを入れたザックを埋めて、ビーコンリサーチ、プローブ(ゾンデ)捜索、最後にスコップで掘り起こすという一連の練習。ビーコンでおおよその範囲は絞れても、プローブ(ゾンデ)捜索は思いのほか難しいことに気が付く。錦織SLの「ビーコンだけで人が探せると思ったら大間違いだよ。」という一言。まさしくその通りである。そして、ビーコン練習の締めくくりは雪崩体験。実際にもう既に顔色が悪い私と、ゲストの女性が1人ずつ交替で実際に埋まりプローブで人体の感触を確かめながら掘り起こすという実践練習。仰向けで口元は手で覆って、全身を30センチほどの雪で埋まった。安全のため、足首から下は残して、危険なときは合図が送れるよう工夫。実際埋まって見ると、体は全然動かない。息苦しいことこの上もない。地上の話し声はかなり遠くに聞こえ、何よりも真っ暗でかなり不安になる。私は実際雪崩で首から上を残して埋もれてしまったことがあるが、比較にならないほどだ。実際に遭ったらかなりパニックになることは間違いない。そして雪崩に巻き込まれてから最初の15分は生存率が高いといわれているが、この状態でも15分は持たない。それにうつ伏せや、もし体の上下が逆になり、もし口元が雪でいっぱいになったら、もっと短い時間しか生存できないだろう。掘り起こされた私は顔が土色。それでも貴重な体験だった。


雪崩埋没体験


そのあと、引き続き弱層テストを行った。昨日と違うところは、ゲストと会員の何人かがスノーソーを実際使ったところと、リーダーによるハンドテストをおこなったところである。11時ごろ講習会は無事に終了。錦織SL本当にありがとうござました。非常に単純かつ明快な解説と実践練習はプロの雪崩講習会を受けているような気持になり、感謝の気持に絶えません。自分ももっと勉強しなければならない。その後自由滑走となり、12時15分にロープウェイの乗り場に全員集合。まだ滑るというゲスト1人を残して、他全員が宿にひきあげた。帰り支度を整えた後、13時30分全員が自宅への帰路に着いた。

成果
・全員がほとんど足並みを揃えて、中尾根を安全に無事に滑れたこと。
・ビーコン練習、弱層テスト、雪崩対策に時間を割くことができ、危機意識が高まった。

反省
・講習会の事前打ち合わせを詳細にする必要を感じた。
講習会に参加するにあたって、最低限のレベルの確認をすることが課題。

今後の課題
・地図とコンパスを使ったルートファインディングの練習の必要性。
・セルフレスキューの練習を恒例化することによって、全体として危機意識を高め、より安全で楽しいツアーにつなげること。
・初心者でもいける山行を増やす必要性を感じた。ただし、参加者のレベルによっては、リーダーの負担が増大することが懸念される。
以上 記録 宮本