白馬岳・鑓ヶ岳個人山行報告
平成16年5月1日から2日
参加者 土屋(L)、木村由佳里、永島、宮本(記録)

5月1日 天気 快晴 
猿倉駐車場8:22 1235m →  大雪渓取付 9:45 1526m   大雪渓:葱平12:45 2300m → 白馬山荘 16:00 2840m 白馬岳頂上   16:50 2932.2m

 猿倉駐車場出発 雪がかなり残っており、最初からシールを 使えた。夏道を大雪渓目指して登っていった。天気は快晴。雲ひとつない青空にドーンとそびえる白馬岳。そして杓子、鑓ヶ岳。行列になっている大雪渓をイメージしていたが、ずいぶん集団がまばらだった。例年に比べると相当に少ないようだ。

 葱平付近で歩行アイゼンを着ける。宮本は初めてのアイゼン装着で、土屋さんにつきっきりで指導していただきながら、ふらふらと登っていく。それでも土屋さんと永島さんはシール登高だ。クトーすら着けていない。結局最後まで2人はシール登高だった。小雪渓を経て白馬岳頂上へ。頂上付近の雪はほとんどなかった。360度の展望に疲れが吹っ飛んだ。白馬山荘への帰路土屋さんが頂上直下からのシュプールを発見。シュプール はずっと下まで続いていた。皆で驚嘆の声をあげる。滑り出しは50度以上あるか?最初のターンに失敗したら岩の塊に叩きつけられて、滑落だろう。まさに命懸けだ。18時待ちに待った夕食。ビールで乾杯!お疲れ様でした!外を見ると旭岳の向こう側に夕陽が沈んで茜色の稜線がくっきり。美しい!「自然を滑 る会」の方々がいて、夕食後懇親会となる。栂池から天狗原〜小蓮華〜三国境を越えてやってきたそうだ。21時には全員が部屋に戻って就寝。

5月2日 天気 快晴
白馬山荘出発 7:00 2840m → 旭岳頂上7:45 2867m  → 清水谷右俣8:20 2300m → 鑓ヶ岳頂上11:00 2903m → 中央ルンゼ滑走開始 11:05 2903m   → ルンゼ咽喉部通過 11:25 2568m→ 滑落 11:31 2459 m→ ルンゼ滑走終了 12:00 1812m → 小日向のコル  13:30 1826m  → 猿倉駐車場   14:00 1235m  

 7時 白馬山荘出発。朝日がさんさんと降り注ぐ旭岳の斜面にアイゼンが気持いいほどよく効く。頂上でスキーに履き替え 、いよいよ待ちに待った滑走。清水谷右俣。そこはすばらしい 大斜面!誰も踏み入れたことがないような未開の斜面がどこまでも広がっていた!正面に剣の雄大な姿が見える。皆存分にシ ュプールを描きながら、快適に滑っていった。標高2450mまで 下ると、斜面が緩やかになる。その後切れ落ちている斜面を思い切って滑り、 標高2300mまで滑り降りた。旭岳からの大斜面を振り返りつつ 、今度は鑓ヶ岳へ向かった。標高にして600mの登り返しである。皆無言でひたすら登った。気が付くと稜線到着。(2750m )雪が全くないので、担いで行くことになった。途中、雷鳥がたたずんでいた。吹き飛ばされそうなくらいの強風の中、頂上到着。

 鑓ヶ岳到着。滑走の第2ラウンド。 頂上直下のルンゼを滑走開始。滑り出しは40度以上か。思わず気が遠くなるほどの斜度だ。永島さんが先陣を切る。軽快に ターンを決めて、あっという間に小さくなった 。進路に岩塊が あり、それをかわせば大丈夫そうか。宮本も続く。雪はざら目で思ったよりも滑りやすい。しかし岩塊が目の前に迫ってくる !何とかかわした。振り返ってみると、滑り出しの場所が見えない!途中木村さんが右にルート(大出原に合流する)をとろ うとしていたが、順調なのでそのまま真直ぐ滑る。ところが、 徐々にルンゼの幅が狭くなり、加えて斜度がさらに厳しくなった。45度か、それ以上か。絶壁に近い。ルンゼといっても、いつか終点があるわけだが、底が全然見えない。このまま永久に続くのでは思われるほどの深さを感じた。自分たちの滑ったあとを追うように表層雪崩が起きていた。最も危険な咽喉部が迫 ってきた。ルンゼの幅は約2,3メートルしかない。石だらけの絶壁。初心者の域を脱していない滑走技術。どうする?転ん だら一貫の終わりだぞ!しかし、何とか通過。しかし、この次がいけなかった…。

 滑落!一瞬何が起きたのかわからなかった。そのうち転がって頭が先になり、加速がつきだした。何とか反転して足が先になった。でも、だめだ!止まらない…と思った瞬間、永島さんに体でガッチリ止められていた。その横を木村さんがスキーを 履いたままずるずる落ちていったが、自力で停止できたようだ 。結果として宮本は数十メートル落ちた。進路には岩塊はなか ったが、永島さんに止めてもらえなかったら、と思うとゾッと する。頭の中が真っ白。顔はこわばり、足は震えていた。恐ら くは息をすることすら忘れていただろう。左右には相当の密度で石が混じっている。中央は、相変わらず表層雪崩が起きてい た。ザーッと不気味な音を立てて流れている。雪崩が一段楽したところで、慎重すぎるくらいゆっくり降りていた。
 ルンゼの終点が見えてきた。この危険な状況を脱したい一心 で滑ったが、遅々として進まない。とてつもなく長い時間に感 じられた。そんな中、土屋さんと永島さんは、時折笑顔を見せ ながら滑っていた。こんな状況の中でも華麗なターンを決めて 一気に下って来た。それなりの技量であれば、純粋に楽しめた と思った。誠に申し訳ない。やっとの思いで、ルンゼの終点に 到着。寿命は何年か縮まっただろうか。中継地点だった鑓温泉 がはるか後方に見えた。そうか、ダイレクトに降りてきたのだ 。土屋さんの「今までで最も恐かったところ。まさに上級コー ス」、永島さんの「昨日の白馬岳直下のコースよりも難しい」 という言葉に驚愕。ただ恐くしてしまったのは私(宮本)だな あ、と反省しきり。

 大休止後、杓子沢出合までの滑走。そこから約200mの登り 返し。のんびり登って小日向のコルに到着。テント村ができていた。改めて、鑓ヶ岳を振り返った。一瞬眩暈を覚えるほどの 感動が私を襲った。何ていうところを…。よくぞ無事で…。それからはしばらく皆で「本当にすごい所を滑ってきた」と口々に感慨に浸っていた。最後は小日向のコルから猿倉まで一気に滑って終了。土屋さんと木村さんの「もう今シーズンは思い残すことがないくらい満足」がこのツアーの充実度を示している 。当然、私(宮本)も永島さんも大満足。私にとっては、あら ゆる面でシーズン1年目の集大成とも言える山行動になりまし た。

成果
・1日にして1700mup、2日目も1000mup、1700mdownという標 高差に富む本格的なスキーツアーができたこと
・鑓ヶ岳中央ルンゼという難易度が高いコースを滑走できたと 。
・旭岳からの滑走は快適であり、今後も期待できる。

反省と課題
・滑走前にルートを確認すること。参加者の技量相当なコース を選択すること
・ルートによってはヘルメットが必要。
・危険な場所は集中力 を切らさない。