雪崩ビーコン・GPS練習会報告
2003年11月15日(土)  明治神宮内苑と代々木公園

年は新入会員やゲストが増えたこともあり22名と多くの参加者を得て、ビーコン講師には新入会員の錦織さん、GPS講師には同じく野村さんにお願いして、和気藹々とした雰囲気のうちに雪崩ビーコンとGPSの練習が出来た。
何れもいざ本番で役立つように日頃から練習することが大切なので、今後も機会ある度に少しずつでも練習しましょう。

参加者:矢口、倉崎、木村彰、金井、合田、上林、小林、中館、杉原、榊、中山、大竹、石黒、佐藤直、錦織、深井、野村 17名
ゲスト:押川、中川、中原、田中、大塚    5名  
参加者合計: 22名 ただし、GPS練習参加者は17名

時間割りと実施場所: 明治神宮内苑北奥の芝生地
1000〜 T.雪崩ビーコン練習       講師:錦織正明 
1130〜   昼食
1200〜 U.雪崩ビーコン送受信距離テスト 担当:合田英興
1320〜 V.GPS講習          講師:野村健一
   代々木公園の芝生地
1520〜   移動しながらGPS練習
1610〜1650 チャイ・パーティ

以下は各担当単位の報告です。
T.雪崩ビーコン練習(担当:錦織正明)
内容 1.セルフレスキュー全体の手順の確認
     2.ビーコンサーチの手順と注意点
     3.初心者と熟練者に分けてビーコンサーチの実地練習

成果
・今回はビーコンサーチ初心者の人数がゲストも含めて6名おり、こうした方々にビーコンの機能とその必要性、使い方を理解してもらえたこと。
・熟練者においてはシーズン前のビーコンサーチ慣熟と埋没ビーコンの姿勢による受信感度の違いなどを理解してもらえたこと。

反省点
・初心者は初回の練習である程度使いこなせるまでビーコンの使い方を習得してもらう方が望ましいが、やや時間不足を感じた。(初心者の実質的なビーコンサーチの練習は1回のみ)
・複数ビーコンの捜索方法もやり方は示せたが、参加者に十分練習してもらえなかった。

今後の課題
・熟練者は単純なビーコンサーチ練習にそれほどの時間を必要としないため実際のセルフレスキューの場面を想定したシミュレーション練習(パーティーの中での役割分担、ビーコン/ゾンデサーチ、救命処置、搬出など)がより有効であろう。
・(担当者の個人的な意見として)1回のビーコンサーチ練習に多くの時間をかける必要はないが、ビーコンに慣れておくため、シーズン中に1回10分から15分程度のサーチ練習を数多くこなす機会を持てるようにしたい。

U.雪崩ビーコン送受信距離テスト(担当:合田英興)
総括  1. 全機種とも新品の同一銘柄電池に入れ替えて、同一条件下で実施した。
     2. 代表的機種1台だけを送信状態にして、他機で受信可能距離を確認する形式とした。
        3. 受信すると、音、光(アナログの場合)or数字(ディジタルの場合)の順で反応あった。
        4. 全体としては、アナログ機は送受信距離が長く、ディジタル機は短い傾向にある。
       5. 捜索し易さは、逆にディジタル機の方がアナログ機よりも優れている。
        6. 発信間隔は、短い機種の方が受信され易く、捜索中も安心感がある。
        7. 総合的に判断すると、m2が最優秀ながら、最安価のOpti4でも充分な機能はある。
        8. 当日気温は18℃であり低温の雪崩現場テストではないので、距離はあくまで目安。
        9. また送受信機の相対的位置は最も電波の強い方向で実施したので、雪崩現場では低温でもありこの数値の5割程度しか電波は届かないと想定した方が安全である。

(距離単位:m)

受  信  側  《2003年11月15日、天候:曇り、気温:18℃、風:微風》
送信側 メーカー ORTOVOX MAMMUT BCA PIEPS
機種 f1 focus m2(m1) x1 Barryvox Tracker DTS 457 Opti4
ORTOVOX f1 focus 音50
光45
音65
数35
音45
数33
音45
数30
音33
数33
音45
光40
m2 音53
光45
音58
数35
音45
数32
音45
数30
音33
数33
音35
光30
MAMMUT Barryvox 音55
音65
数40
音50
数38
音36
数36
音50
光40
BCA Tracker DTS 音40
音60
数35

数30
音40
数30
音30
数30
音47
光35
PIEPS 457 Opti4 音60
光50
音65
数40
音50
数35
音55
数40
音38
数38
音60
光50

V.GPS講習会(担当:野村健一)
始めに
に入ると危険と遭遇する可能性は至る所に潜んでいます。私は経験浅く皆様にうんちくを傾ける立場にありませんが、冬山では雪崩での遭難やルートを見失うことから起こる遭難が代表的な危険との遭遇であると言うことは容易に想像することができます。
  雪崩に関しては、危険個所に近寄らない、或いは起こさないと言うことで、知識で避けることがある程度出来るかも知れませんが、不可抗力であると言う要素も否定できないのではないでしょうか。大自然の前で人間が無力である所以だと思います。しかし、二次的遭難(さまよい歩いて転落等)を含めて道迷いについては、判断ミスを代表とする人為的原因が殆どではないでしょうか。つまりきちんと取り組めば回避出来る遭難が殆どではないかと言うことです。であれば山に入る以上、道迷い防止には真摯に取り組み、しっかりと学び、回避する努力が求められていると考えます。
ではどうすれば回避できるかですが、私のような経験不足のものが、ルートの間違いを回避できる一つはGPSです。もっとも大切なのは技術と山に対する感を磨くことでしょうが、それらが役立たない状況もあり得るのではないでしょうか。そのような時に判断の手助けになってくれるのがGPSだと思っています。しかしGPSが道具である以上持っているだけでは駄目です。正確に理解して、使いこなさないと、何の意味もないと言うことです。そしてGPSは私の独断では、インターネットで無償配布されている「カシミール3D」というソフトと一緒に使わないとこれまた使いこなしたとは言えないのではないかと言うことです。今回はカシミールでの作業も概略御説明しましたが、時間と場所の関係でかなり不充分であったとは思います。次回はカシミール勉強会も良いかなと思って居ります。
GPSは自分が何処にいるかだけでなく、どの方向に進めばいいのか、来た道を戻りたい、同じ場所に戻ってきたい、デジカメの撮影ポイントを知りたい、何時何分に何処にいたか、目的地には何時に着くか、今日の日没時間は、コースから外れていないか等々知り得る情報はいろいろあります。積極的に使って、使いこなそうではありませんか。いざというときに役に立つか立たないかは普段の使用頻度と比例します。尚講習会は以下の要領で行いました。

講習会概要
1.前回の復習をしました。
2.カシミールとの互換モデルを紹介しました。
3.カシミールを使って、ルート(目的地までの幾つかのポイントを結んで作ったコース)を設定し、それをGPSに転送する方法を説明しました。
4. 図の印刷、緯度経度線の入れ方。地図にはGPSに転送したポイント名を自動表示する方法を説明しました。
5. PSを持って歩く時の注意を説明しました。
6. 歩いた軌跡を取ってそれをPCに転送する方法を説明しました。
7. GPSと標高について触れ、GPS標高と地図数値との差を実感してもらいました。
8. 今来た道を戻る方法を3方法説明しました。

実技  2コースに分かれて実際にGPSに入力されたルートに従って歩きました。最終地点で無事集合出来ました。

反省点 GPSだけでなく、カシミールとの関係、カシミールの操作にまで及んだため、盛りだくさんとなり、消化不良気味となってしまった。

今後の課題
1. カシミールを机上で、出来れば液晶プロジェクター等を使って説明会を開催したいと思っています。
2. 実際にGPSをもって、日帰り山行等でGPSを勉強する機会を作りたいと思っています。

(文:合田英興)