沢尻岳〜モッコ岳〜貝吹岳
2003年3月15日(土)〜17日(月)
参加者 村上静志(L) 猪俣恵美子(記録)

15日 雫石10:30 大木原11:05〜30 尾根取付12:00〜30 660m地点13:10〜20 740m地点13:40〜50 900m地点14:20〜30 前山尾根合流14:50 1091m峰15:20〜30 1200m付近16:30(幕営) 16日 テント7:00 沢尻岳7:20 モッコ岳8:10〜20 1211m峰8:40 休憩9:05〜20 979m峰10:25〜11:05 五番森11:40 986m峰先12:00〜20 868m峰分岐13:45〜14:00 地森手前鞍部15:00(幕営) 17日 テント7:10 地森肩8:00 1026m峰8:45〜9:00 貝吹岳9:55〜10:30 887m峰11:50〜12:10 国見温泉林道分岐12:40 国道46号14:00 あねっこの湯14:15〜15:00 雫石15:20〜42  タクシー代 雫石〜大木原 ジャンボ10500円 下山地点〜道の駅(あねっこの湯)1220円  道の駅〜雫石2820円

15日 JR東日本の新幹線乗り放題キップのせいで、たび割7きっぷもキャンセル待ちでやっとぎりぎり入手となった。混雑は予想していたが指定席まで身動きできないほどとは思っていなかったので、盛岡に到着するまでに早くもヘトヘトとなる。何せスキーと大きなザックをかかえての身の上では身の置き所のない3時間だった。
盛岡で乗り換えて雫石へ。天気予報は3日間とも良好とのこと。期待がもてそうだ。後の列車で到着する仲間と合流してジャンボタクシーで登山口の大木原へ向かう。除雪は集落までで、林道入口からスキーを着ける。
牧場までトレースがあった。30分ほどの尾根取り付きまでほぼ平坦に進む。小沢を渡り急な斜面をなんとか上って目標の小尾根に乗る。灌木がうるさい細い藪尾根を行く。10年前はこんなに木が混んでいなかったと杉原さんが話していた。
先頭を交代しながら高度を上げていく。2時間ほどで前山からの尾根を合わせると傾斜は緩み、北に方向を変える。ここで、先を急ぐ私たち縦走組2名は、羽後朝日岳ピストン組と別れ、先行する。夏道との合流点の前山分岐は気づかず通過してしまった。ピストン組の幕営予定地である901m峰を越えた鞍部は二重山稜になっていて、なるほど適地と思われた。
尾根の右側は雪庇となっていて、境目を進んでいると突然村上さんの姿が消える。背丈以上の割れ目に落ちたのだ。幸い怪我はなく、ハングぎみの垂直な壁をピッケルで上がり、ザックはロープで引っ張りあげた。落ちたのが私だったら、上がれなかったと思う。
風が強く、沢尻岳の頂上にはテントは張れないので、手前に探しながら上る。まだかろうじて木のある1200m付近に16時30分幕営。

16日 好天に明けたため、かなり冷え込んだ。前日同様、風が強く雪煙が舞っている。シールを付けたままのスキーで出発するが、斜度もありガチガチにクラストしているため、すぐにクトーを装着した。20分ほどで沢尻岳だった。右手に行く先のモッコ岳への稜線が手招きしている。羽後朝日岳は? と眺めれば、大きく登り返した大荒沢岳のさらに奥に見えている。往復には予想どおり、かなり時間がかかりそうであった。無雪期に2度登っているだけにその白い姿は魅力的だったが、それ以上にほとんど記録のない空白地帯を行く縦走路への不安と緊張感で躊躇無く割愛に同意する。
和賀岳は彼方に、さすがに盟主の貫禄で雪をまとうと一段とランクアップして見えた。そちらへもいつかは、とこころ惹かれる。
いよいよ、未知のルートに足を踏み込む。モッコ岳へは安定した穏やかな稜線だ。小広い頂上からは辿る縦走路の全貌が眺められた。はるかに秋田駒ケ岳・岩手山まで続く長大な稜線だ。強風のため、ろくろく休憩もできないのでシールのまま滑りはじめる。
徐々に高度を落としながらピークを次々越えていく。細い稜線は概ね東側が雪庇になって境目には亀裂が走り、気の抜けないアップダウンが続く。五番森で早くも昼近くとなり、幕営予定の貝吹岳まではとても届きそうにない。となると、秋田駒ケ岳へはあと一日では無理なので、国見峠からの下山と決まった。
振り返ると、モッコ岳がもう遠く高く大きい。行く先には、反射板のある1026m峰が地森と並んでいい目印だ。868m峰との分岐は、視界がないと難しいと思った。
注意していたのに、まったく予期せぬところに割れ目があって、再び落ちるアクシデントが発生。幸い怪我はなかったが、かなり体力を消耗する。下りついた地森手前の鞍部はブナ林の広がる実に雰囲気のいい所で、少々早めの沈没を決めた。

17日 快晴に明ける。風も収まり、穏やかな朝となった。地森は頂上を踏まずトラバースして肩に上がる。見上げる1026m峰への稜線は、心配していたとおり、急で細く、かなり悪い。仕方なく、スキーを担いで中央の灌木沿いを上った。時間にすればわずかだったのだが、緊張でとても長く感じ、反射板について心底ほっとした。
貝吹岳の三角点は雪の下だったが、測量用の白板が出ていた。秋田駒ケ岳の横長根が、青空にきれいなスカイラインを描いている。あともう1日あれば、と本当に残念だった。もう、国見温泉も国道46号線も間近に見える。旧国道の国見峠上887m峰には建物が建っていて貝吹岳からは左に回りこむように進むいい目標物となる。すぐ近くに見えるのだが、案外時間がかかった。
貝吹岳からは登山道もあり、おおむね稜線の左側をトラバ−スしている。標高が下がり気温も上がって、稜線上は雪の状態が悪いので、道沿いを藪がらみで進む。887m峰には雪壁を乗り越えて上がったが、登らずに手前をまけば峠に出たようだ。
昼食を済ませ、ようやくシ−ルをはずす時がきた。思えば登山口からずっと付けっぱなしだった。素晴らしい縦走路に別れを告げて、いよいよお楽しみの滑降だ。が、なだらかな林道では快適な滑りとはいかないのも当然か。冬季閉鎖の国見温泉分岐を過ぎ、国道46号への2時間は、実に遠かったが、最後まで板を担がずに滑れたのはラッキ−だった。
タクシ−で道の駅併設の「あねっこの湯」経由で雫石へ戻る。私にとっては、まったく人の気配のない無垢な大自然にどっぷりと浸った最高に充実した3日間だった。