立山・剱沢周辺

自然の猛威も難行苦行も知恵を出し合い克服

5月25日〜27日(月)
●参加4人 森達男(CL)、榊陽(SL、記録)、杉原鉄夫、大坪俊郎

25日 晴 風強い 午後後半曇り 日没時に雲が切れ、富山湾が夕日に映えて素晴らしい。
 夜行列車が遅れ、室堂には朝の9時過ぎに到着。早速スキーに履き替え、足慣らしに浄土山東面の展望台を目指す(9:50)。登れば薬師から槍・穂高まで見通せて幸先がよさそうだ。浄土山山頂は雪が少なそうなので、ともかく雪のあるところまで登り、そこから室堂まで一気に降る(11:10)。
 昼食後、室堂を出発(12:45)、称名川沿いに快適な斜面を選びながら雷鳥沢入り口まで下リ、シールをつける(12:30)。ここからはひたすらの登りとなる。雪渓を登りきったところでスキー協のスキー教室の方々と会う。参加者のほとんどは顔見知りのリピ−タ−である。この頃からガスが立ち込め、視界が完全に閉ざされる。剱御前小屋には14:40到着。今日はこれで行動終了としてビールで乾杯。夕食時、三多摩スキークラブの方や、大阪の釣さんに会う。

26日 曇り 風強い 日の出時の朝焼けが美しかった。
 真砂沢を滑る予定であったが、山岳警備隊からの情報では、雪渓の下の方は状態が悪いとのことだったので、剱沢に変更し8:00出発。まだ硬く凍った雪渓に、金属音を響かせながら豪快に降る。高度2500m程度まで降ると漸くエッジが食い込むようになりほっとするが、すぐに長次郎谷出合まできてしまった(8:30)。ここで自然の力のすさまじさに驚かされる。長次郎谷は出合から上流およそ300mまで八ツ峰側から崩落した土石流で埋まり滑降の意欲をそがれる。そこで真砂沢ロッジまで行こうとしたが、土石流は剱沢の左岸を走り、出合から約200m下で沢を横断しているのでこれも断念する。こんな大規模な土石流は始めて見たが、何十年に一度のものであろう。これらの土石が姿を消すのには、今年一年かかると想像される。
 以上のような次第で、多少不満足な気持ちを持って引き上げることにし、9:00に登行開始。途中気温が低下し、風も強く吹き沢の上半分は氷結気味の状態であったが、 11:50には剱御前小屋に到着した。
 昼食後12:45)、雷鳥沢右岸から雷鳥坂側に出て、良い斜面を選びながら降る。13:05に称名川に出る。後はリフトを使って雷鳥荘に13:30到着、早速冷えた体を温泉で暖め、後はビールを飲みながら今日の滑降話に花を咲かせる。

27日 朝のうち雪、後曇りときどき晴、午後雨
 目覚めると雪が降っていて驚く。どうしようかと思い悩むが、朝食後には雪もやみ雲も切れてきたので出かける(7:00)。7:40室堂に着く頃には晴れ間も現れ、毛勝三山も眺められる。昨夜の雪はこの辺では15cmくらい積もっている。途中で弱層テストを行うと、今までの硬い雪面上に積もった新雪層は、簡単にズレ落ちる。少々心配であるが、ともかく一ノ越までということで、シールをつけ一気に一ノ越まで登る(8:45)。御山谷側は南東斜面のため、それほど新雪はなく雪面もしっかりしているようなので、タンボ平を目指すことにする(9:10)。御山谷沿いに滑り降りた後、スキーを担ぐ。途中何箇所か新雪が薄くついたり、新雪が崩れ落ちたりしている急な雪面のトラバースを繰り返し、東一ノ越着10;30。
 ここで新雪のついた最初の急斜面を如何に安全に降るか議論したが、経験豊富な大坪さんの意見で次のように決まった。最初降り口の右端から右斜め下の這い松の出ているところまで静かに斜滑降、次いで雪を刺激しないようにキックターンして急斜面の下を一気に斜滑降で降リ傾斜の緩いところまで行く。後続者は間隔を30m位空けてパイロットのトレースを忠実に辿ることに決定。森、杉原、榊、大坪の順で降る。
 安全な所まで降り何事もなかったことにほっとする。(このコース取りは、下で見ていた三多摩の方から、高く評価されたと後で伺った)。これでもう安心と思ったが、雷が鳴り始めたうえ、これから下は、暖冬で例年に比べ深い縦溝(50cm以上)が無数にある雪面を延々と降らねばならない。雷雨の来る前に、溝にはまらないように、スキーの先が溝の側面に刺さらないようにと、必死でスキーを操る難行苦行の最後だった。ケーブル駅到着(12:00)。以後順調な接続で大町、松本へ出た。                           (記録:榊)


雷鳴に追われるようにタンボ平を滑り降り、黒部平駅に着いた榊さん(左)と森さんの両リーダー

記録者(榊)の謝辞:
 目的の真砂沢を滑ることはできなかったが、森リーダーのよきリードとベテラン大坪さんの的を射たアドバイスによって、実り多いツアーができたことを感謝します。また、私が最高齢であることを皆さんが案じて下さり、決して若くはないのに(失礼!) 危険な個所でのラッセルで、私がもたもたしているとすぐに交替してくださるなど、暖かい御心遣いを戴いたことに御礼申し上げます。
 今年は体調の良し悪しの差が著しく、良いときは快調そのものだが、ガタが来るとリタイアというパターンを繰り返していた。この原因が判らず、もう本当にスキー自体からリタイアかと思うことがあったが、今回のツアー中に杉原さんのアドバイスでその克服の可能性が出てきて、気分がすっきりしたことにも感謝したい。詳細については、私自身の「人体実験」を繰り返したうえ、別の機会に報告します。