立山、上の廊下、薬師岳、槍ヶ岳縦走
期間 5月2日(木)〜5月7日(火)
メンバー 村上静志 矢本和彦(L わらじの仲間)藤原修平(わらじの仲間)
当初の計画では、上の廊下を横断して赤牛岳に登り東沢谷を経由して双六、槍ヶ岳につなぐ計画でしたが雪不足のため横断できず、薬師越えのコースに変更して槍ヶ岳まで縦走をしました。
5月2日晴れ
富山駅で矢本君、藤原さんと合流、連休の狭間で人も少なく混雑も感じないまま室堂に到着、仕度をして9時55分青空の中出発です。5日分の食料と装備でザックが一杯。特に藤原さんのザックは共同装備を一手に引き受けてかなりの重さです。 一の越しから御山谷を下り鬼岳に登り返して獅子岳、ザラ峠の下りは雪も安定して気持よく下ります。登り返して五色ヶ原小屋に向いますが、初日で重荷に調子が上がらず、午後3時30分、五色ヶ原ヒユッテの横にツエルトを。今回は軽量化のためナイロンのツエルトを2張り用意しました。
5月3日快晴
本日はヌクイ谷の下降から始まります。少し雪が緩むのを待って7時に出発。五色ヶ原小屋を通りすぎてそのまま南に進み、ヌクイ谷の側面の急斜面に入ります。途中滝のでている岩場の上部をトラバースして下の斜面につなぎヌクイ谷1940m位に。高度差で約500mの緊張する下降でした。
それから廊下沢に向うため、越中沢岳東にのびる尾根に登り返しです。急斜面ですがシールで登れるルートを探しながら、2540m位のところに登りました。廊下沢はこれより東に下がったコルから始まりますが、手前から沢に入り急斜面をくだります。(コルからですと、そんなに急斜面では有りません) 上の方は気持よく滑りましたが1800m位から落石帯に入ります。ときどきカーンカーンと両岸から落ちてくるので気が抜けません。石の多さに時々スキーを外したりして12時8分、上の廊下1600m位に到着しました。
しかし対岸に渡るスノウブリッジが見つかりません。先に到着していた単独の静岡の青年と、矢本君、藤原さんが渡られる場所を探しに行きますが、見つからないよう。私は沢の事は沢屋に任せて見守るだけです。
上流スゴ沢の出合いまで溯行して渡られるところを探す事に、これが私の上の廊下、初遡行になってしまいました。それも兼用靴で。
岩をへつったり、水に入ったり、雪の斜面をトラバースしたりして約1キロ、雪解けで水量も多く股ぐらいまで水につかり、岩場の石がすぐ崩れ落ちるヒヤヒヤの遡行でした。おくれて静岡の青年も同じコースをやってきました。
午後2時30分スゴ沢の出合いに尽きましたが、ここも渡る所が有りません。流れも強く徒渉も無理。矢本君の提案で、明日の早朝なら少し水が少なくなるはずだから渡れるかも知れない、との意見でまとまって、今夜はここに泊まる事にしました。
5月4日雨
雨の音で目が覚め、食事が終わる頃には本格的な雨に。 水量も減らず渡る事も出来ません。静岡の青年はスゴ乗越に登ったみたいですが、我々は水も有り稜線に泊まるより暖かいので停滞する事に。雨漏りのするツエルトの中でジッと我慢の子です。
午後になると水量もかなり増えて大きな雪の固まりが沢山流れてきます。
水ぎわは危ないと少し高い所に移動する事にしました。そこで2つ有るツエルトの1つをフライにしたので、その後雨漏りは無くなりましたが、かなり狭くなりました。雨漏りの中にいるよりは快適?ですが、ゴアのツエルトを用意すれば良かった、後悔先に立たずです。
5月5日雨のち晴れ
雨はやみませんが5時50分出発しました。スゴ乗越に登って薬師越えのコースに変更です。
最初の滝は正面左のもろい岩場をピッケルを刺して登りましたが、2番目の滝は大きく、まず右手の岩場を登りますが、ここももろく途中で行き詰まり懸垂で元に戻ります。左手の雪の斜面に変更して、最後は薮の急斜面を抜けると滝の上に続く雪の斜面に出る事ができました。
上部は雲の中ですが、赤牛側から朝日が。しばらく登ると晴れ渡ってきて2100m位の斜面で1時間ほど休んで濡れた物を広げて乾かす事にしました。気持の良い風が吹いて、いままでの苦労が飛去って行くような清々しさです。
11時35分、雪庇の薄い所を抜けて2370mのスゴ小屋の先に登り、しばし休憩、なんとなく解放されたような気分になりました。
薬師越えに向います。間山、北薬師を過ぎると尾根に雪の無い所が現れ、スキーを担いだりしながらの前進です。スゴ沢の出合いから高度差1500mの登りと距離は、さすがに脚にきましたが午後4時20分薬師岳山頂に。太郎平小屋には午後6時に到着しました。
上の廊下で濡れてしまった靴や装備を乾かすために素泊まりする事に。当初の全行程ツエルトでの計画は崩れてしまいましたが、やはり小屋は快適、自炊部屋で消灯まで寛いでいました。
5月6日晴
連休最終日、装備もすっかり乾きました。7時20分、小屋にいた20人位の若者のテレマーカー集団と中高年の山スキーの人達と北ノ俣岳に向います。
対照的な2つの集団、カッコ良いテレマーカー集団と、中高年の山スキーヤーの人達を比べてみると、若い人達がテレマークをやりたくなるのがわかるような気がします。彼ら(彼女ら)はスキーの機能性よりも独自性に魅力を感じているのでしょう。フアッションもなかなか決まっています。
北ノ俣から先は我々だけになりました。今年の黒部五郎は上部左は雪が無く、夏道に近いところを登り、矢本君と藤原さんはそのまま山頂に向います。カールを滑り降りて12時10分黒部五朗小屋に。お湯を沸かしてコーヒーをいれました。
たっぷり休んで出発。三俣蓮華をこえて双六小屋には午後4時40分につきました。小屋には客が1人、明日は閉めて下山するそうです。ビールを頼むと3日前の雨の日に無くなったそうで、あぁ残念。
天気はどうも下り坂。小屋の裏手にツエルトを張って、残ったウイスキーをちびちびやりながら眠りました。
5月7日風雨
やはり雨になってしまいました。それに風も強い。しかしここまで来て槍ヶ岳に行かないのも---。
5時20分槍に向けて出発です。樅沢岳の斜面も雪が山頂まで続かず、最初から担ぎです。進むごとに西鎌尾根は風雨が増し、休む気にもなりませんが、千丈沢乗越にかかる頃には、矢本君達のペースに着いてゆけず、先に行ってもらう事にします。高度は上がりますが視界が無いため、いつごろ槍の小屋に着くのかわかりません。ガラガラと近くに落石の音が響きます。10時45分二人が小屋に到着、遅れて私も小屋に入りました。
他に客のいない小屋の中で、昼食を頼んでバーナーのようなストーブで濡れた物を乾かします。最近のGWは、雪より雨の方が多いので比較的新しい上下を着ていましたから、中まで濡れる事は無かったのですが、手袋や靴の中は長時間風雨にさらされると濡れてしまうのは避ける事ができません。
食事の後、記念に山頂に行く二人。私は今回はパスして休憩です。午後1時、戻ってきた二人と最後の飛騨沢の下りです。飛騨乗越より視界の無い斜面をどんどん下りますが、槍平小屋を過ぎる辺りから、沢は大きく口を開けて流れも相当な物になってきました。
しかたなく林の中を下りますが、なかなか進めません。滝谷の出合いも少し上流に登り返して渡りました。この先はずーっと担ぎです。途中山道を見失い沢の石ころの上を長く歩きましたが、午後5時過ぎやっと白出沢の出会いに、それから黙々と歩いて午後6時30分新穂高につき、一足先に帰ることになった藤原さんの乗ったバスを見送って、今回のツアーを終わりました。
危ない所も先頭を行ってくれたリーダーの矢本君と、重い共同装備を一手に引き受けてくれた藤原さんに感謝。今回は2度も雨にあたって、わらじは水神様が付いているんじゃないの、と言いながら又挑戦しょうと懲りないメンバーでした。
村上(記)